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第377話
抱きしめ方が強くて、少し息が苦しい。
それでも離れてほしくないって思うのは、やっぱり番を解消するなんてしたくないから。
「大丈夫。もし妊娠できなくても俺は旭陽を連れて逃げるよ。」
「そんなん無理やん。探されて捕まって終わり。悠介を誑かしたって言われて俺······ほんまに殺されるかも。」
「させないよ。絶対。」
頬にキスされて、少し体を離す。
至近距離で見つめあって、キスをした。
もう一度、悠介の胸に沈む。
そして、そのままお祈りをした。
子供が出来ますように。
誰よりも大切に愛情を持って育てるから。って。
「さ、そろそろ帰ろうか。」
悠介に腕をひかれて立ち上がる。
「······なあ、もしもの話していい?」
「うん」
あってほしくない話。
そんな未来は来ないで欲しいと思うけど、言わずには居れなかった。
「もし、俺が妊娠できやんかったら······逃げる事なんてしやんでいい。俺が悠介の前から消えるから、俺の事なんて忘れて幸せになって。」
そう言って腕を掴んでいた悠介の手を離させ、先にその場を後にする。
階段を降りて、深く息を吐いた。
「······悠介が幸せになれますように。」
さっき忘れていた1番大切な事を、神社の方に向かって祈った。
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