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第378話 千紘side
体がだるい。
上体を起こすことも出来ずにベッドに寝転んだまま、偉成の手を取って指を絡める。
発情期が終わり、部屋がグチャグチャになっているのがベッドの上からチラッと見ただけでもわかって気分が下がる。
「ん······?あ、あー······声枯れてる······」
ガラガラした声がちょっと情けない。
小さな声で話していたはずなのに、偉成が目を覚まして強く俺を抱きしめた。
「おはよう、千紘」
「おはよぉ」
「喉辛くないか?そうだ、水を飲もう。」
ガラガラ声を聞いた偉成が起きて、水を持ってきてくれる。
「起きれるか?」
「無理」
そう言うと偉成が水を口に含み、そのまま俺にキスをして口移しで水を飲ませてくれる。冷たいそれが喉に染みて気持ちいい。
「まだいる?」
「うん」
もう一度水をもらって、偉成は俺の隣に座る。
「部屋が思って以上にグチャグチャだった。後で片付けないとな」
「ごめんね、巣作り······しちゃって」
「あれは本能だから仕方ないだろ。それに俺の物をずっと握りしめてるのは可愛かった。」
頭を撫でられて、偉成がマイナスな感情を少しでも抱いてないことがわかると安心した。
まだ俺が動けないから、風呂に入ることも出来ない。今の間に片付けるよと、掃除を始めた偉成に申し訳なく思いながらも、仕方が無いことだと自分に言い聞かせる。
「洗濯してくるから、千紘は寝てるんだぞ」
「はーい」
返事をすると、偉成が寝室を出て行って、少しの間1人になる。
ああ、またこの1週間分の勉強を匡と優生君に教えてもらわないと。何度も2人に助けられてる、迷惑じゃないかなぁ、と不安に思ってしまう。
布団を被り直し、深く息を吐く。
きっと2人はいつもみたいに優しく受け入れてくれる。匡は「仕方ねえなあ」って言いながらも、綺麗にまとめられたノートを見せてくれるし、優生君はそんな匡に「素直じゃないね」って言いながら、俺に説明してくれるんだ。
「千紘、朝ご飯どうする?食べれるなら持ってくるが」
「起こしてぇ」
寝室に来た偉成に向かい手を伸ばすと、上体を起こすのを手伝ってくれる。
「先に風呂に入るか。スッキリしたいだろ。」
「そうだね······っうわ!」
「捕まってろ」
お姫様抱っこされてお風呂場まで連れて行かれる。偉成の首に腕を回して、ぴたっと密着するのを密かに楽しんだ。
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