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第386話 千紘side
「何で高良先輩の味方したの」
「そうじゃない。」
「意地悪なのは偉成だろ。俺が言ったことは間違えてない!」
生徒会室で、高良先輩が出ていってから偉成に詰め寄った。
「おい、喧嘩するなよ面倒臭い。」
「東條先輩だってそうだ!高良先輩の方ばっかり持つ!」
「俺を巻き込むな」
「皆冷たい!何でオメガのこと少しも考えてくれないの!」
何で俺はこんなに自分勝手な事を言っているんだろう。でも止められなかった。多分、偉成はいつでも俺の味方でいてくれるって思ってたから、そのショックが大きくて。
「千紘、落ち着け。」
「落ち着いてるよ」
「······今日は匡と先に帰れ。」
偉成がそう言って俺のバッグを匡に渡した。匡は渋々って感じにそれを受け取って、自分のバックも手に持ち俺の背中を押して生徒会室から出る。
「何をそんなにムキになってんだよ」
「······偉成が······」
「兄貴が?」
「······偉成が俺の味方してくれなかったぁっ!」
自分でも下らないと思う。そんな理由でこんなに喚くなんて。
自然と溢れてきた涙が頬を伝う。
「泣くなよ」
「ひっ、ひ······っぅ、うぅ······」
「ああ、もう······。落ち着け、な?」
背中をポンポン撫でられる。
「新学期始まって疲れたんだろ。」
「匡······っ」
「話ならいくらでも聞いてやるから、とりあえず泣きやめ。優生との方が話しやすいなら優生を呼ぼうか?」
匡は優しい。
優生君は匡のこういう所を好きになったんだろうな。
「ううん······、匡」
「何?」
「今日泊めて」
「は?······それは無理だろ」
すごく真面目な顔で返事をされて「そうだよね」と言いながら項垂れた。甘えてばかりじゃダメだ。
「あー······兄貴に不満があるなら、正直に言えばいいと思う。あいつは千紘の事なら何でも受け止めてくれると思う。」
「······そう、かなぁ。」
「そうだよ。例えばめちゃくちゃな言葉でも受け止めてくれるよ」
「······なら、言ってみる。」
寮の部屋の前について、匡と別れる。
部屋に上がり、直ぐにお風呂に入る事にして浴槽を洗いお湯を溜めた。
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