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第387話
湯船に浸かり、ぼんやりとしながら時間が過ぎていく。
さっき小さく「ただいま」って声が聞こえたけど、知らないふりをして目を閉じる。
偉成に何でも言えばいいって匡は言ってたけど、何を言えばいいのかわからない。
さっきは多分、俺がムキになっただけ。味方をしてくれなかったのは悲しかったけど、よく良く考えれば、偉成は俺を否定することは無かった。
「······俺が全部悪いんだよな」
ザバッと音を立てて湯船から上がり、風呂場から出る。体を拭いて服を着ていると、そのタイミングで偉成が脱衣所にやってきて、俺は偉成の顔を見たまま、ビシッと固まった。
悪かったかもしれないけど、謝る気にはならない。体の固まりが解けて、偉成の横を通り過ぎ、リビングに行こうとすると、腕を掴まれて壁に背中をドンッと押し付けられた。
「痛っ」
「何で無視する。」
「え······ちょっと、離してよ。」
「まだ俺が高良の味方をしたって怒ってるのか?」
腕を掴む力が痛くて顔を歪める。
気付いているはずなのに、離してくれない。
「離してってば!」
「答えろ」
「──っ!離さないなら答えない!痛いんだって!」
偉成に強くそう言うと、手が離れた。ほっとして強ばっていた体からふっと力を抜く。
「んむっ!?」
突然唇を勢いよく塞がれた。驚いて目を見開く俺と、少し怒った匂いをさせている偉成。苦しくなって肩をポンポンっと叩けば、唇が離れ、代わりに首筋に噛み付かれる。
「っ、あ······」
「千紘」
「ぁ、や、やだ、待ってよ······っ!」
スウェットの中に手が差し入れられ、下着の上からペニスを揉まれる。
「お前が悪い。俺を無視するからだ」
「ぁ、ま、まって······んっ、く······!」
噛み付くようなキスをされて、何でこんなことになったのかといっぱい考えを巡らせるけど、そんな余裕はだんだんとなくなっていく。
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