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第396話

久しぶりに受ける授業。それが終わると生徒会の時間がやってきて、この前言い合った千紘ちゃんももちろんそこに居て、正直すごく気まずい。 「久しぶり、高良先輩」 「あー······ああ、うん。」 でも千紘ちゃんは俺に声を掛けてくれて、俺もなんとかいつものように返事を返した······つもり。 そして早々に生徒会活動を終わらせ、寮に戻る。お風呂に入り、1人でご飯を食べてゆっくりしていると、会長がやって来た。 「紅茶飲む?最近いいの貰ってさ」 「ああ、いただこう。ありがとう」 お湯を沸かし、紅茶を用意してソファーに座る会長に渡す。 「で、相談ってなんだ?」 早速その話か。 俺もソファーに座り、紅茶を1口飲んで息を吐いた。 「······旭陽の事。」 「ああ。だが俺はあまり楠本さんのことを知らないからな。上手く相談に乗れるかわからない。」 「まあ、今よりは解決するんじゃないかなって思ってるよ。······あのね」 旭陽との関係に機嫌が設けられたこと。 1年で旭陽が妊娠しなければ、番を解消させられること。 「旭陽は······妊娠しにくい体で、すごく焦ってるんだ。俺は旭陽と別れるつもりは無いし、人殺しになんてなりたくもない。」 「高良······」 「俺より旭陽の方がずっと辛いのはわかってる。なのに、どうもしてあげられない。俺には何の力もない。それなのに、何でこんな俺がアルファなんだろ······」 視界が滲む。いつの間にか頬に涙が伝って、慌てて手の甲で涙を拭った。 「泣くな。お前が泣いても解決しない。」 「······わかっては、いるんだけど」 やっと不安な気持ちが言葉にできた。1度溢れ出したそれは止まることを知らなくて、次々と溢れる涙を目を押さえて隠した。 「高良。お前の両親が納得した上で楠本さんを守る方法は、確かに楠本さんが妊娠して無事に子供を産むことしかない。」 「······改めて言われなくてもわかってるよ。」 苦笑を零して顔を上げる。 会長と目が合う。背中にゾワッとした感覚が走った。会長の纏う空気が、千紘ちゃんと出会う前のような冷たいものだったから。 「もし楠本さんが妊娠できなかったとして、お前は楠本さんを連れて逃げるくらいできないのか?」 「······わかってるよ。俺だってその時が来れば旭陽と一緒に逃げるつもりだ。でも、見つかったら?俺の親はアルファの俺に酷く執着してる。捕まったら終わりだ。」 「下らないな。それなら捕まらない場所に逃げればいいだけだ。」 「······ねえ、相談聞く気ある?もっと優しい言葉をかけてくれないかな。あれ、目見えてる?俺泣いてたよね?」 思わず突っ込むと会長が呆れたように溜息を吐いた。 「お前は俺が思っていたよりもずっと頭が弱いみたいだな?相談は聞いた。その上でもし妊娠できなかったなら、逃げ出せって言ったんだ。必要なら協力してやる。逃げ場所なら俺が用意してやろう。」 「わぁ······頼もしいね······」 思っていた答えじゃなかったけど、これが会長の優しさだ。 「ありがとう」 「それから、楠本さんには体を冷やさないようにさせろ。適度な運動も必要だ。ストレスは溜めないように。」 「うん、伝える。」 旭陽の事も考えてくれる会長に感謝して、1口紅茶を飲んだ。

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