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第397話
「会長の話って言うのは何?」
「前も話した、体育祭でのオメガの対応についてだ。」
「あー、成程。」
この前俺が千紘ちゃんと言い合ったあれか。会長がマグカップを置いて、じっと俺を見る。
「誉と東條は協力してくれる。俺はお前には1番協力してほしいと思ってる。」
「何で?」
「お前には番がいるからだ。」
そう言われて、こくこくと頷いた。
会長は自分の手に視線を落とす。
「オメガについて、俺達はもっと理解をしなければならない。そうすれば自分の番を守ることができるかもしれないからだ。オメガにとって何がいい事で、何が悪い事なのかを知るべきだ。」
「その為にまずは体育祭からってことね。······まあ、確かに俺もそうは思うよ。この前千紘ちゃんに強く当たったのは、自分に余裕がなかっただけ。他のことを考える暇がなかった。」
「ああ。お前から楠本さんの話を聞いてこの間のお前の発言について納得した。楠本さんの事をわかるためにも、協力してくれないか。」
断わる猶予をくれたのは、俺がこれ以上1人で抱え込まないためなのだろうか。
「······わかった。でも、俺の1番は旭陽だ。それは絶対に揺るがない。体育祭で何かが起こったのと同時に、旭陽に何かがあれば、俺は旭陽を優先するよ。」
「もちろんだ。······よし、やっと纏まったな。」
やるべき事が見えて、お互いに頷き合う。
「千紘ちゃんに謝らないと。」
「あの後俺も千紘に酷いことをしてしまってな。」
「え、そうなの?何で?会長こそ千紘ちゃんを守らなきゃダメなのに。」
「自制がきかなかった。考えてみろ。楠本さんに無視されたりしたらどう思う?」
言われた通りイメージをしてみる。
旭陽に無視される······旭陽に、無視をされる?
「キレるね」
「そうだろう。俺の番なんだ。1番愛している相手に無視されて何も感じないほど俺も馬鹿じゃない。」
会長は千紘ちゃんに無視をされて怒ったのか。
考えただけで、少し同情した。
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