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第398話

「可哀想に。無視されて、怒ったんだ?」 「ああ。そしたら怒り返された。それでわかった。俺が間違っていたって。」 「······そう?無視されて怒るのは当たり前じゃない?」 急に会長が真顔になって、強い目で俺を見るから、何事かと思って固唾を飲んだ。 「高良、お前にいいことを教えてやる。オメガの尻に敷かれている方が、関係は上手くいく。」 「······ああ、そうですか。」 千紘ちゃんの方が力関係は上なんだ。まあ、そんな感じはしていたけれど。 「旭陽は多分、そんなことないと思うんだけどな。」 「1度尻に敷かれてみろ。それはそれでいいと思うぞ。」 「ちょっと······会長の見方が変わってきちゃったなぁ。」 前から変わってるとは思ってたけど、残念な程に変態だ。 自覚しているのかしていないのか、にこやかに笑ってる会長を見て苦笑を零す。 「まあとにかく、相手が怒っているならこちらにも何らかの非があったということだからな。」 「それはわかるけどさ」 「もう話は終わりだな。俺は千紘が待ってるから帰るぞ。」 「うん。ありがとうね。あ、待って。一緒に謝りに行く」 ソファーから立ち上がり、会長の後ろについて部屋をでる。 そして会長の部屋に行き、そこにいるであろう千紘ちゃんの名前を呼んだ。 「はい?」 すると返事をしてくれた千紘ちゃんは、俺がいることが不思議なようで小首を傾げて俺を見る。 「この間はごめんね」 「あ、あー······ううん、いいです。俺も酷い事言ったし······」 視線を落としたかと思えば、ちらっと俺を見上げる千紘ちゃん。そんな仕草にきゅんっとする。これが旭陽だったら襲ってでも抱いてたところだ。 「旭陽先輩が居なくて寂しいのはわかるから」 「······旭陽が居ないと部屋が広く感じて仕方ないんだよね。千紘ちゃんと会長さえよければ、いつでも部屋に来てよ。お菓子用意しておくから。」 そう言って千紘ちゃんに笑いかけると、千紘ちゃんは目をキラキラさせて頷いた。 お菓子って言葉につられたみたいだ。 「じゃあね。おやすみ」 「うん!高良先輩も、おやすみなさい!」 手を振って、部屋を出て、また1人の部屋に戻る。 でもいつもより、少し心が軽くなった気がした。

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