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第400話

それは突然のこと。 5月が終わり、6月になった。 晩御飯が出来たよって、お婆ちゃんに呼ばれて部屋から出てきた。 いい匂いがする······そう思っていたのに、ほんまに突然、吐き気に襲われて口元を手で覆う。 「旭陽?どうしたの?」 「······ううん、なんもない。」 でもすぐにそれは無くなって、なんやったんやろう?と思いながら並べられた食事に手をつける。 5月の終わり。体育祭はこの前の土曜に終わったらしい。やから今週の休みには悠介が会いに来てくれるって連絡をくれた。 「あ、次の休みに悠介来るよ。」 「あら!なら美味しいご飯を沢山作らないとね!」 「いつも美味しいよ」 お婆ちゃんが張り切っている姿を見て、俺もお爺ちゃんも少し控えめに笑う。 けれど次の瞬間にはさっき感じた吐き気が襲ってきて、手に持っていた箸を置く。 「ん······お婆ちゃんごめん、ちょっと体調悪いみたい。残していい?」 「大丈夫?いいわよ、無理しないで。お風呂に入って今日は早く寝なさい。体をちゃんと温めてね。」 「うん、ありがとう。」 食器を下げ、そのまま部屋に行き着替えをとって風呂に入る。 「うぅ······気持ち悪い······」 なんか、やけに不安な気持ちになってきて、特に意味もないのに湯船に浸かりながら泣いた。 辛い、苦しい、気持ち悪い。 「······悠介、悠介······」 会いたい。 悠介に会いたい。 今ものすごく、抱きしめてほしい。 抱きしめて、熱を分けてもらいたい。 それから、何もわからなくなるくらい抱いてほしい。 いや、そうじゃなくて、そばに居てくれるだけでもいい。 「······電話、しよ。」 急いで体と髪を洗い、風呂から上がった。 髪を乾かすのもそこそこに、悠介に電話をかけた。

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