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第403話
電車に揺られながら、旭陽のことを考える。
早く、急がないと。
旭陽が不安に押しつぶされそうになっている。
夜遅く。俺以外に人のいないこの車両で、旭陽の名前を呟いた。
しばらくしてやっと駅に着いた。旭陽に電話をするとワンコールで出て、声を震わせて俺の名前を呼ぶ。
「もう着いたよ。大丈夫だからね」
「······うん」
「まだ不安?」
「うん」
即答した旭陽に、どうすれば安心してもらえるか考えて、軽く走りながら口を開く。
「俺がそこに着くまで、旭陽の好きなところ言うね」
「え、な、何それ······」
「まずは、笑顔が可愛いところ。」
「ちょ、ちょっと!悠介!」
慌てだした旭陽。でも少しでも旭陽の気が紛れるなら、そっちの方がいいと思って好きなところを言い続ける。
「んっ、俺も······俺も悠介の優しいところが大好き。」
「ふふっ、そうなの?旭陽が好きだから、優しくなれるんだと思うよ。」
「······悠介は、俺だけに優しくしてたらいいよ。」
普段そうでもない旭陽が、珍しく独占欲を露わにしてて、すごく胸がキュンキュンした。愛しすぎる。
「うん。俺には旭陽だけだよ。······旭陽、着いた。鍵開けて」
旭陽の走り出した音が聞こえて、思わずくすくすと笑った。そんなに焦らなくていいのに。
「悠介ッ!」
玄関から飛び出してきた旭陽が、すごい勢いで俺に抱きついた。よろけそうになるのを堪えて、俺より小さな体を抱きしめる。
「悠介、悠介っ」
「うん。待たせてごめんね。」
止まっていたように思えた旭陽の涙が溢れて頬を濡らしている。
抱きつかれてそのまま、ぶつかるようなキスをしてきて歯が当たり、痛みに呻きそうになったけど、それよりも旭陽が細かく震えていることが気になって、旭陽を抱き上げ、家の中に入らせてもらう。
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