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第405話
事を終えて、旭陽を胸に抱きながらベッドに寝転ぶ。旭陽は俺に抱きついて離れようとしない。それがすごく嬉しい。久しぶりの旭陽の体温は俺の冷えた心を温めてくれる。
「悠介」
「ん?何?」
「······ごめんね、急に来てもらって。」
旭陽の手が俺の胸に触れる。それが今度は頬を撫でて、目が合うとキスをした。
「旭陽が呼ぶなら、どこにでも行くよ。」
「······アホやなぁ」
「違うよ。旭陽が好きなだけ」
そう言うと旭陽がくすくす笑うから、俺もつられたように笑った。
「······あんな」
ボソボソと話し出した旭陽。
「今日、急に気持ち悪くなってな。そしたら······なんか、すごい不安になって、我慢できやんくて······」
「えっ、体調悪いの?ごめん、気付かなかった。今は?大丈夫?」
「大丈夫。ご飯食べる前が酷かってんなぁ。何でやろ。」
それを聞いて一瞬思考が止まった。ご飯を食べる前?それってもしかして、匂いを嗅いだからとか······?
「旭陽、匂いを嗅いだら気持ち悪くなったとかじゃない?」
「······あ、確かにそうかも。でもそれが何?」
「······ねえ、妊娠したんじゃない?」
そう言うと、旭陽が勢いよく起き上がって目を見開いて自分のお腹に触れる。
「うそ······」
「明日病院に行ってみようか。」
「う、うん。でも······違うかったら······」
もし妊娠していなかったら、その時のショックを想像して顔を青くしている旭陽。
「違うなら、旭陽が体調不良ってことが分かるから、しばらくの間は休まないといけないね。」
「······うん」
「一緒に行くから、気負わずに、ね?」
ゆっくりと頷いた旭陽が、また俺の胸に倒れてくる。それを抱きとめて、前髪をかき分け、額にキスをした。
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