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第408話
旭陽の家に帰り、お婆さん達に報告すると泣きながら喜んでくれた。
それが嬉しくて、旭陽も笑いながら綺麗な涙を流している。
「悠介、抱きしめて」
そして旭陽の部屋に移動してふたりきりになると、旭陽がすごく甘えてきた。可愛くて俺の膝の上に向かい合わせに座らせ、そのまま強く抱きしめる。
「悠介の匂い、1番落ち着く。······ほんまにここから学校通うん?」
「うん。旭陽と一緒にいられるし、一石二鳥だね。」
「······遠くなるだけやん。卒業生やからって、悠介の寮で暫く生活させてくれたりしんかな?」
「無理でしょ。それに日中は1人になる。そうなるよりお婆さんやお爺さんが居てくれるここの方が安心だよ。」
背中をポンポンと撫でる。旭陽は俺の肩に頭を乗せて「そっか」と呟く。
「あの部屋はどうすんの?」
「んー······あ、赤目君に譲るのもありだな。子供が生まれる頃には卒業してるだろうし。」
「ならほんまにこっちに住むん?俺は嬉しいけど、悠介の負担にならへん?」
「ならないよ。もう、旭陽はそんなこと考えなくていいってば。」
旭陽の頬を撫でると、ちらっと俺に視線を寄越して口元を緩める。
「いつも言うてるけど悠介は優しいね。」
そのまま俺の唇に自らのそれを合わせた旭陽。愛しくてたまらない。なんて可愛いんだ。
「旭陽、あんまり可愛いことしないで。」
「えー?そんなんしてないよ」
「してるよ。無意識なの?タチが悪い······」
「そんなことないし!変なこと言わんでや。」
くすくす笑う旭陽が、面白がって俺に擦り寄る。仏にでもならないとこの邪念に勝てない気がする。今にも反応しそうな息子に鎮まれ······と思いながら、そっと目を閉じる。
「悠介?寝んの?悠介のお母さん達に連絡しなあかんのんとちゃうん?」
「寝ないけど、旭陽のせいで元気になりそうだから今瞑想してる。」
「え······え?嘘やろ。」
旭陽がそっと俺の股間に触れる。軽く首をもたげだしたそれに気付いたみたいだ。目を開けると旭陽が顔を赤くしていた。
「嘘じゃないので煽らないでください」
「······ごめんなさい」
軽く目を伏せて申し訳なさそうにする旭陽。かと思えば笑いだして、俺も釣られるようにくすくす笑った。
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