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第410話
千紘ちゃんと会長が思っていたよりも喜んでくれて、旭陽も俺も嬉しくてたまらなかった。
「高良はこれからどうするんだ?オメガの妊娠にはアルファがそばに居ることが1番大切だと聞いたが。」
「うん。だからこれからは旭陽の家から通うつもりだよ。あ······そうだ会長。赤目君······弟君にさ、俺が使ってる部屋使うかどうか聞いてくれない?」
「匡に?······あ、でもあいつも小鹿がいるしな。番はやっぱり一緒に暮らすのがいいか。わかった、聞いてみる。」
会長の返事に頷いて、泣き疲れてボーッとしてる旭陽を抱き寄せた。
「じゃあ、そろそろ切るね。旭陽も今日は疲れたみたいだ。」
「ああ。じゃあな」
電話を切り寝転ぶのと同時に、旭陽を俺の上に重なるように寝転ばせる。胸の上で眠ろうとする旭陽の髪を撫でながら、いつ旭陽の家に荷物を持ってこようか、と1週間程の予定を考えた。
「悠介、寝そう······」
「いいよ。」
背中を撫でて少しすると、旭陽の体が重たくなって眠ったのがわかった。
俺の上で、こんな風に眠ってくれるなんて。安心してくれている証拠だと思うと愛しさが爆発した。思わず強く抱き締めて、そのまま旭陽の体を撫でる。
「ん······ぅ······」
子供が出来たのは嬉しいけど、旭陽の事を子供と取り合いすることになる未来は目に見えていて、そこは俺が譲るべきか······と真剣に悩んでしまう。
「······手、うざい」
少し意識が浮上した旭陽が、ボソボソとそう呟いた。どうやら俺が体を撫でているのが鬱陶しいみたい。
「ごめんね」
俺も小さな声で謝ると、旭陽はまた眠りに落ちた。
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