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第411話 千紘side
電話が切れて、俺は思わず偉成に抱きついた。
「旭陽先輩、赤ちゃんだって!嬉しいね!」
「そうだな。」
偉成が俺の背中に手を回して、優しく微笑む。
「匡に聞かないといけないな······。早速だが電話するか。」
「直接話に行けば?俺もついて行きたい」
「わかった」
偉成が俺を抱きしめたまま立ち上がるから、咄嗟に首に腕を回した。そのまま部屋を出て匡の部屋に向かうものだから、恥ずかしさとちょっとした嬉しさに顔が熱くなる。
「偉成、おろして」
「匡の部屋だからこのままでいい」
「······そう」
何だか偉成の考えは俺にはよくわからない。でも偉成がいいならいいか。
そうして匡の部屋に着き、ドアをノックする。
少しだけ待つとドアが開いて、俺達を見た匡が呆れた顔をして溜息を吐いた。
「匡、話がある。部屋に入れてくれ」
「······それなら呼べばいいのに。兄貴の部屋の方が広いだろ。」
「千紘が匡の部屋に行くって言うから」
「違うよ。直接話に行けばって言ったんだよ」
訂正すると匡は「一緒だろ」と言ってきたけど少し違う。
それから匡の部屋に上がらせてもらって、匡がベッドに、俺達がソファーに座る。
「狭いだろ。」
「オメガの部屋よりずっと広いよ」
「あっそ」
で?と言葉を続けた匡に、さっきまで高良先輩としていた話を偉成が匡に伝えた。
「え、俺があの部屋使っていいのか?」
「ああ。生徒会役員だし、小鹿と一緒に暮らせばいい。」
「······すげえ嬉しい」
優生君と過ごせることが嬉しいようで、その表情は優しさで充ちている。
「高良には匡から伝えるか?」
「ああ。俺から連絡する。で、高良先輩の番が妊娠したんだよなぁ。高良先輩が卒業する頃に産まれるのか?」
「多分、そうだと思う。」
高良先輩が卒業する頃······それは偉成が傍からいなくなっちゃう頃のこと。
「盛大に祝おう」
「そうだな」
2人は頷きあっていて、俺はそれをぼんやりと眺めながら、偉成がいなくなっちゃうんだなぁ······と少し寂しくなる事を考えていた。
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