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第415話
放課後、匡と一緒に生徒会室に行くと高良先輩以外が既に全員集まっていた。
そして全員が、何やらカタログを真剣に見ている。
「ブランケットとソックスのセットだって。産前産後も使えるからいいと思うんだが。」
「妊婦用のボディケアグッズはどうだ。」
「カフェインレスのハーブティーは?」
話してるのはきっと、旭陽先輩への妊娠祝いのことに違いない。
「妊娠祝いを渡すのか?」
匡がそう聞くと、3人の目が俺達に向いてコクっと大きく頷いた。
「あの高良を父親にしてくれるんだ。楠本さんには感謝しないとな。」
「一時期は本当、どうなるかと思った。学内のオメガを漁りまくっていて······」
高梨先輩と東條先輩が重たい溜息を吐く。
それに苦笑を返して、空いていたソファーの席に座る。
「そうだ松舞。お前はオメガだろ。妊娠すれば何が欲しいんだ。」
「えー?俺は妊娠したことがないからわからないですよ。ネットで検索してみたらどうですか?」
「ネットに書いてある言葉を全て鵜呑みにするなんてバカのすることだ。」
「······ああ、そうですか。」
ネットは嫌なのに、俺からの意見は聞く気があるのが不思議だ。高梨先輩ならオメガの意見なんか聞くかって言いそうなのに。
「皆で1つのものを渡すんですか?」
「いや、俺は個人的に。」
「······それなら、さっき3人がそれぞれ言っていたものでいいと思う······。」
ぼそっと呟くと、3人は視線を逸らす。
「違えよ千紘。この人達は自分で決められないから、誰かの賛同が欲しいだけだ。」
「あ、そうなんだ?」
3人共、小さく頷いた。
気持ちがこもっているなら何を貰っても嬉しいと思うんだけど。
「偉成はブランケットとソックスのセットだったよね?冷えるのは良くないからいいと思うけど。」
「そうか!」
偉成にそう言うと、嬉しそうに笑った。
話を聞いていた高梨先輩と東條先輩は、俺をちらちら見てくる。2人も何か意見が欲しいらしい。
いつもとは違う生徒会の柔らかい雰囲気に、俺も思わず笑みが漏れた。
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