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第417話 匡side
生徒会が終わってからでいいから出掛けたい、と優生に言われて急いでオメガの寮まで迎えに行った。
「優生!」
「匡君!」
寮の前まで行くと、優生が走ってきて俺に抱きついた。抱きとめて「行くか」と言うと、顔を上げた優生が大きく頷く。
「どこに行きたいんだ?」
「えっと······どこかに行きたいんじゃなくて、匡君とお出掛けしたかったんだ。だってほら、匡君は生徒会に入ってから忙しそうだし、それでなくても寮が別々で一緒にいる時間も少ないのに······。」
「拗ねてんの?」
「······ほんの、ちょっとだけ。」
自然と口角が上がる。
優生の後頭部を押さえてキスをする。
「んっ!」
「可愛い。拗ねてたのか。」
「······早く行こうよ」
照れたようで、俺の腕を掴みズンズンと外に向かって歩いていく。
足を止めて腕を引くと、ふらついた優生が俺の胸に倒れ込む。
「もっと甘えていいんだぞ。俺は優生に甘えられたり、ワガママ言われたりしてみたい。」
「······何それ。匡君、今日はすごく素直だね。」
「そうか?いつもだろ。」
「ん······まあ、それもそうか。ねえ、じゃあワガママ聞いてほしいな。」
何?と促してみると、優生はにっこり笑う。
「あのね、カフェで半分こしてみたい!カップルみたいでしょ?」
「みたいじゃなくて、そうなんだけどな。いいよ。半分こしよう。」
「やったー!じゃあ早く行こ!ほら匡君、歩いて!」
優生が俺の手を引っ張る。
そうされるのが心地よくて、わざとゆっくり歩いてみた。
前までは気弱で、こうやって俺を引っ張って歩くことなんてできなかっただろうに。
「匡君は何食べたい?」
「優生が食べたいもの。」
「えー?じゃあスイーツたくさんある所に行っちゃうよ?いいの?」
「いいよ」
キュッと優生の手を強く握ると、優生も握り返してきて、そんな些細な異に幸せを感じた。
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