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第419話
「美味しい······。匡君も食べて!ほら、あーん!」
「······あー」
恥ずかしげもなく、フォークに刺したガトーショコラを俺の口元に持ってくる優生。あまりにも目がキラキラしてて断ることは出来ずに、言われた通り口を開いた。
「ん、美味い。」
口の中に広がる甘さ。
甘いのは少し苦手だけれど、言わないで笑ってみせた。
「よかったぁ。もっと食べる?」
「ううん、優生が食べろ。好きなんだろ?」
そう言うと大きく頷いて、またケーキを頬張る。
「寮のデザートも美味しいけど、たまにしか出ないからなぁ。アルファの寮はどうなの?」
「献立が決まってるのか?俺達は好きな物を選んで食べる。······まあ、俺はほとんど部屋で自炊してるけどな。」
「······同じ学校なのに、やっぱり違うんだね。」
性別で待遇が変わる。
優生は少し悲しそうな表情をしていて、それをなんとか消し去ってやりたくなる、
「優生、これからは一緒に暮らせる。優生が食べたいなら、俺が何でも作るよ。」
「······匡君」
「それにすぐ傍に兄貴もいるからな。兄貴は料理が好きだし。······そういえば優生は兄貴と話したことは?」
「んー······あった、かなぁ?」
それも曖昧な記憶らしい。
「チーズケーキも美味しいよ。匡君、あーん!」
「ん」
引越しが終われば、優生と一緒に暮らせる。
それが楽しみで早く週末にならないかなと、心をワクワクさせていた。
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