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第420話

ケーキを食べ終わった優生。 飲み物を飲んで「お腹いっぱい」と笑顔を零す。 「優生」 「うん?何?」 一時期、あれだけ拗れていた高良先輩も番を作って、そして父親になる。 俺も、そろそろ進まないといけないんじゃないか。 今の俺じゃ、もし自分に何かがあった時優生を守ることが出来ない。 俺以外にも、優生を守ってくれる人が必要だ。 「······今度、実家に帰るよ。」 「え······?」 優生の目がゆっくりと見開かれる。 それから「どうして」と見つめてきた。 「優生は俺のせいで家族の元にもう戻れないだろ。その状況でもし俺に何かあったら、お前を守ってくれる人が居ない。そうならないように、ちゃんと······俺が······」 「匡君がしたくないことはしなくていい。······待って、ここで話すことじゃないね。そろそろいい時間だし、帰ろう。」 立ち上がった優生を追いかけるように腰をあげる。伝票を持って会計をし、外に出るとすかさず優生が俺の手を掴み、そのまま指を絡めた。 「匡君は僕の為に頑張らなくていいんだよ。匡君自身のために生きてくれたらいい。僕はそれが嬉しいよ。」 「でもな、俺達も結婚することになったり、子供が生まれたりしたら、きっと俺達だけじゃ解決できないこともあると思う。」 「き、匡君······結婚とか子供とか、もうそこまで······」 顔を赤くして俯いた優生に、ハッとした。 本当だ、俺は今何をバカ正直に······。 繋いでいない方の手で、口元を覆う。優生から少し顔を背けた。 「で、でも、確かに、子供には······お婆ちゃんとか、お爺ちゃんの存在も大切、だよね。」 そんな優生の言葉に大きく頷いた。 きっと、祖父母のいる生活はいない生活よりかは潤うはずだ。 「僕の親はもう無理だけど、匡君の御両親はきっと優しいだろうから。」 「······だから、そろそろ長い家出も終わりにしようと思う。ちゃんと話をする。」 「ついて行ってもいい?」 「また今度な。」 もしかしたら、俺と親との間の溝は埋まらないかもしれない。それどころか深くなったりでもしたら······。そんな希望のない光景を優生には見せたくない。 「匡君、無理しちゃダメだからね。」 「わかってる。」 ただ、両親に会いに行くだけ。 それだけの事なのに、考えるだけで少し緊張した。

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