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第422話 偉成side
***
「匡と出掛けてくる。心配するな、夜には帰るから。」
「······ん」
ベッドの中でまだ寝惚けている千紘にそう伝え、寝室を出る。リビングに行くと匡が緊張した面持ちでそこにいて、肩をトンと叩き「行くぞ」と言って外に出た。
「千紘はまだ寝てるのか?」
「ああ。基本的に千紘はお寝坊さんだぞ。」
「何だその言い方。」
匡が変な目で俺を見る。
何もおかしいことを言った覚えはない。
迎えに呼んだ車に乗り込み、忙しなく手を動かす匡を見て、落ち着かせてやらないとなと思うけれどいい考えが浮かばない。
「匡、少し寝たらどうだ?」
「は?そんな長い間車に乗るわけじゃねえだろ。」
「着いたら起こしてやるから、とにかく寝てろ。」
寝ていれば緊張なんてできないだろう。と匡を自信満々に見ると呆れた表情を返された。
「緊張して逆に寝れねえよ。起きてるからいい。」
「そうか。······何か話すか?」
「······千紘の事でも話しとけば。」
そう言われて、匡は千紘の事が聞きたいのかと思って最近の千紘の様子について話すことにした。
「最近はやけに甘えただなぁ。······いや、そうかと思えばすごく俺から離れようとしたり······。何でだ?」
「知らん」
「俺は千紘に甘えられたり、頼られたりすると凄く嬉しい。それどころか生きてる実感が湧く。」
だから離れようとされると寂しいし、苦しい。
「匡はそんな事ないのか?」
「甘えられるのは嬉しい。でも優生は自立しようとしてるみたいだ。俺が家族から引き離したせいでもあると思う。」
「そういえば俺はお前が何で小鹿を選んで番になったのか聞いていないな。······聞いてもいいか?」
目が合う。けれどそれすぐに逸らされた。
「言えない。」
「······何かあったのか。」
「言えないって言っただろ。」
「そうだな。悪かった。」
少し静かになってしまった車内。
家までまだ時間がかかるのに、気まずい。
「運命の番って、どんなんだ。」
「え?」
「運命の番は、感情が匂いでわかるんだろ?」
「ああ、そうだな。」
そのおかげで助かることもあるし、たまに恥ずかしく感じる時もある。
「どんな感情でもわかるのか?」
「まあ······千紘が考えていることは大体。嬉しいのか悲しいのか、辛いのか······。わかるけど、抽象的にだ。理由はわからないから、感情はわかっても、問題が起こっても直接的な解決には至らないな。」
それに、最近は千紘の感情の匂いが複雑になった。
どの感情が本心なのかわからなくて、上手く対応できない。
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