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第428話 優生side

目を覚ますと真夜中だった。 匡君は隣で僕を抱き締めて眠っている。 ······そういえば僕、あんなエッチな姿を見せちゃった。 「······嫌いって思われたらどうしよう。」 自分から脚を開いて強請るなんて······! 布団を頭まで被り顔を隠す。どうやらそのせいで匡君の被る分まで奪ってしまったみたいで「······寒い」と小さな匡君の声が聞こえた。 最近は暑いからクーラーをつけている。そのせいで匡君が風邪をひいちゃうかもしれない。 仕方なく布団から頭を出すと、何故か匡君が目を開けて僕を見ていた。 「っ!」 「布団、ちょうだい。」 いつもより掠れた声に、寝起きで舌足らずな匡君。胸がキュンとして思わず抱きついた。匡君の手が背中に回って、優しく撫でられる。 「ん······どうした?寒い?」 「好き。大好き。」 「······俺も好き。」 額にキスされて、そのまま目を閉じる。 「風呂は朝に入ろうな。今はゆっくり眠ろう。」 「うん」 匡君の優しい匂いに包まれて眠れるなんて幸せだ。 *** 朝はいつもより早めに起きて、匡君と一緒にお風呂に入った。 それから学校に行く支度をする。 制服に着替え、朝ご飯を食べて歯を磨きカバンを持った。 「なんか、緊張する!」 「初めてここから通うもんな。」 「うん!」 匡君と手を繋いで部屋を出る。こんなことも初めてで、これからは毎日出来るんだと思うと嬉しくてたまらない。 鍵を閉めた匡君と一緒に学校まで向かう。 「ねえ、帰りも一緒がいい。······生徒会が終わるまで、待っていてもいい?」 あんまり引っ付いてると鬱陶しいって思われるかもしれない。でも、1回だけでいいから、一緒に同じ場所に帰りたいんだ。 「いいよ。もしかしたら遅くなるかもしれないから······できればオメガだけが入れる教室にいて欲しい。いや、兄貴に生徒会室に居れないか聞いてみる。」 「えっ!そ、そこまではいいよ。僕ちゃんとオメガの部屋で待てるよ。」 「万が一があるだろ。きっといいって言うから大丈夫だ。」 匡君がスマートフォンを取り出して、会長さんに電話をかけた。 それから少しだけ話をして電話を切る。 「いいって。だから優生は生徒会室で待ってて。」 「うん」 匡君に束縛されているような気がして嬉しい。微笑むと匡君は僕の頬を撫でて、背中を屈め、キスをしてきた。 「顔真っ赤。」 悪戯っぽく笑って僕を見下ろす匡君に、胸が高鳴るばかりだ。

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