429 / 876

第429話

教室について匡君と話していると、チャイムが鳴るギリギリで千紘君が走ってやって来た。 「せ、セーフ!」 「よかったな、間に合って。」 「おはよう千紘君。」 暑い暑いと言ってシャツを仰ぎ風を送る千紘君。 「夏なんて無理。もっとクーラーの温度下げてほしい。蒸し焼きにされちゃうよ」 「走ったからだろ。」 「だって間に合わないと思って······。あ、先生来た。」 先生の姿が見えると匡君は自分の席に戻って行った。 出席をとり、少しの休憩時間の後に1限目が始まる。 「ねえねえ優生君」 「何?」 後ろから声を掛けてきた千紘君。振り返ると何故かニヤニヤしてる。 「どうだった?寮で2人で過ごす夜は!」 「あ······うん。楽しかったよ。幸せだった。千紘君もそうだったでしょ?」 「俺?俺は······ううん。最初は幸せじゃなかったなぁ。部屋を引越ししたのも無理矢理だったし。」 そうだった。千紘君は初め、会長さんに抗っていた。 「今は幸せだけどね。帰ったら好きな人がいるのって凄く嬉しい。」 「そっかぁ。」 そんな話をしていると注意されてしまって、僕は慌てて前を見た。 授業は進み、話を聞いていると眠たくなってしまって、瞼を必死にあげようと思うのに、下瞼とくっついてしまった。 気付けば授業は終わっていて、「優生」と匡君に名前を呼ばれて目を開ける。 「寝てたのか?終わったぞ」 「······ちょっと、眠たくて。」 「まあ、夜中に起きてたし、寝るのもちょっと遅かったからな。」 匡君の手が頬に伸びて、親指が目の下を撫でる。 「薄らとだけどクマできてる。」 「本当?今日はちゃんと寝るよ」 「ああ」 匡君のお腹にトン、と額をつける。 頭を抱えるようにして撫でてくる匡君のおかげで、またこのまま眠ってしまいそうだ。 「······2人、すごく仲良いんだね。いや、そりゃあ番だからそうだと思うけど、見てて可愛い。優生君のその押し付けない甘え方が可愛い。」 「俺の優生が可愛いことは前から知ってただろ。」 「あ、匡のその言い方はなんか癇に障るな。優生君と最初に仲良くなったのは俺なんだからね。」 匡君にくっついたまま千紘君を見ると、僕達を見てくすくす笑ってる。 「ほらほらお2人さん。そろそろ授業が始まるよ。」 名残惜しいけど、匡君から離れて2限目の準備をした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!