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第430話
今日の授業が全部終わった。すぐに匡君がやって来て僕と手を繋ぐ。
「行こう」
「うん」
千紘君はキョトンとしていて、今日生徒会にお邪魔させてもらうことを伝えると、嬉しそうに笑ってくれた。
「じゃあ行こう!俺ね、何かあれば手伝うんだけど、ほとんど何もないから最近は暇なんだよね。だから優生君と遊ぼーっと。」
「兄貴に怒られるぞ」
「偉成だけじゃなくて、皆怒らないと思う。俺と優生君が遊んでるのを微笑ましく見てると思うね。」
「東條先輩と高良先輩はそうかもしらねえけど、高梨先輩は無いだろ。」
高梨先輩は確か、副会長。
そんなに怖い人なのかな。
「いや、あの人は偉成のこと大好きだから、偉成が怒らなかったら怒らないと思うよ。」
「えっ、会長さんのことが好きなの?」
「うん。あの2人幼馴染みたいだし。」
廊下を歩きながらそんな話をしていると、生徒会室のすぐ近くで会長さんを見つけた。
「偉成ー!」
千紘君が走って会長さんに飛びつく。
「おお、千紘。今日もお疲れ様。授業はちゃんと受けたか?」
「うん。あー、偉成の匂いだぁ。」
千紘君は会長さんに抱っこされたまま、生徒会室に入って行く。
「いつもあんな感じなの?」
「ああ、まあ、うん。少しでも離れてるのが寂しくて仕方ないみたいだ。」
「生徒会室でも?」
「千紘はよく兄貴の膝の上でお菓子食べてる。」
生徒会室にお邪魔すると、ソファーに座る会長さんの膝に、向かい合わせにして座っていた千紘君。会長さんの首筋に顔を埋めて匂いを嗅いでいるらしい。
「兄貴、優生はここに居ていいか?それとも別の部屋の方がいい?」
「好きにしてくれていいぞ。皆にも伝えてある。······あ、千紘、噛むな。痛い」
会長さんが千紘君の背中をポンポンと叩いている。
「今日の俺の仕事は優生君と遊ぶことね。」
顔を上げた千紘君が笑顔のまま会長さんにそう伝えた。
「遊ぶのか?まあ、今は急いでやることはないし、好きに過ごしてていいぞ。」
「やったね。じゃあー······優生君、向こう行こ。」
膝から降りた千紘君が僕の手を取って、そのまま奥にあったドアを開け、そこに入る。
「ここ何?」
「仮眠室みたいな感じ。でもテレビもあるし、食べ物もあるから、俺はたまにここで遊んでるよ。」
「そう、なんだ?」
あれ、千紘君って生徒会のメンバーだよね?遊んでいていいのか?って思ったけど、千紘君が楽しそうだから言わないでおこう。
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