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第432話
何をすることも無く生徒会が終わり、千紘と優生のいる部屋を兄貴と一緒に覗くと、2人はテレビをつけたまま眠っていた。
「······無防備過ぎないか。」
「千紘はいつもこうだぞ。」
それぞれ番の元に行き、声を掛ける。
「優生、起きろ。」
「ん······」
「終わったから、帰るぞ。」
「······きょぉ、くん······」
甘えたような声にドキッとする。
兄貴は全く起きない千紘をゆらゆらと揺すっている。
「一緒に帰るんだろ?」
「うん、帰る······。」
もぞもぞと起きて、あくびを零した優生は立ち上がりカバンを持った。
「兄貴、先に帰るぞ。」
優生と手を繋ぎ、部屋をでる。
「千紘、起きないとイタズラするぞ。」
「んん、してもいいよ······。」
そんな会話が聞こえてきて、優生がくすくすと笑っていた。
「帰ったら洗濯物畳みに風呂洗いに料理に······。することが多いな。」
「役割分担しようよ。匡君は何が得意?」
「別にどれも得意じゃないけど。全部できるよ。1番楽なのはなんだ」
「うーん······お風呂洗いじゃない?」
悩んでそう言った優生。
「じゃあ風呂洗いは優生に任せる。あとは俺がやるから」
「えっ!そんなのいいよ!僕も料理は······多分、できるし、洗濯物を畳むことだってできるよ!」
そこは笑顔で頷いてくれたらいいのに。優生はどうやら甘えることに慣れていないらしい。
「匡君、だめ?一緒にしよう?」
「······わかった。」
甘えることには慣れていないのに、俺を見上げるその顔はうるうるしていて、まるで欲しいものを強請る子供みたいだ。
「よかった。匡君ばっかりに負担がかかっちゃ、僕が一緒に住む意味がなくなっちゃうから。」
「俺はそばにいてくれるだけで嬉しいけどな。」
「ふふっ、僕もだよ。」
そんな会話をしながら帰り、寮に着く。
優生は嬉しそうに部屋のドアを開け、「ただいま」と言って靴を脱ぎ、中に入っていった。
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