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第436話 千紘side
***
6月も終盤に差し掛かった頃、もう少しで期末テストだという事を、それぞれの科目の授業で何度も聞いて嫌でも勉強しないといけなくなる。
「千紘、そこ間違ってる。」
「うぇ······もうやりたくない······。」
苦手な英語の勉強を、今日は優生君と匡の部屋にお邪魔して教えて貰っている。
学校の授業と、生徒会が終わるとそのままこの部屋に来た。
「やりたくないならやらなくていい。千紘の点数が悪くなるだけだ。」
「······今日の匡は厳しい」
「そうか?いつも通りだけど。」
教科書を開いた匡は、時々優生君と俺の手元を見て間違いを指摘する。その問題がわからなければ丁寧に教えてくれる。
自分自身の勉強もして、俺達にも教えてくれるんだから、匡が優しいのは誰にだって分かると思う。
「匡君、これって何でこうなるの?」
「そういうルールだから。」
「······何で?」
「そんなことは考えなくていい。ルールはルール。覚えれば済む話だ。」
たまに言葉が鋭くて、ムカッとしちゃた優生君が匡をジロっと睨む。俺はそれが少し怖くて、静かに何も話さないでいる。
「もっと違う言い方があると思う。気になるんだから仕方ないでしょ。」
「······怒ってんのか」
「別に」
ふいっと匡から顔を背けた優生君。匡は溜息を吐いて、優生君の肩を掴み自分の方に顔を向けさせた。
「ごめん。言い方が悪かった。」
「······強く言われるとムカッとする。」
「そうだよな。ごめん。」
匡の凄いことはすぐに謝れることだ。
例えば匡に非が無くても、すぐに謝るんだろう。
まあ、優生君限定だろうけど。
「ねえねえ2人とも、喧嘩しないで楽しく勉強しようよ。」
「······そうだよね。匡君ごめんね。僕も心が狭かったよ。匡君は悪くないよ。」
復習したかったページは、あともう少しで全て終わる。
せめてこれが終わるまで、2人には喧嘩をしないでもらいたい。
「そう言えば兄貴は?部屋にいるんだろ?」
「俺達の分のご飯を作ってくれてるよ。」
偉成は俺が優生君と匡と勉強すると伝えると、晩御飯を作って待ってると言ってくれた。
「えっ!もう少しで7時だよ!急ごう!」
「うん」
後に待っている美味しいご飯を早く食べるために、頭と手を必死に動かした。
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