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第447話

その後は兄貴とくだらない事を話し、母さん達とも少しだけ会話をして寮に戻った。 時間は昼の2時。優生は起きていて「匡君、おはよう。」と柔らかい表情で言う。 朝、実家に帰ると伝えるために少しだけ話したけど、その時の優生はまだ寝惚けていた。 「お家に行ってたんでしょ?何しに?」 「······話がある。」 「えっ!?そんなに重大な事なの?わかった、ちょっと待ってね、準備するから!」 俺が話があると伝えるまでに間があったからか、優生は重大な事だと思って焦りだした。 というか、準備って何だ。 不思議に思いながら優生を見ていると、紅茶をいれて姿勢を正し「よし!」と言う。 「いいよ!」 「ああ、うん。」 やけに気合いの入ってる優生。未だに話すかどうか躊躇しながら、それでも口を開いた。 「優生の、家族について。」 「え······」 驚いている優生が、軽く見開いた目を伏せて視線を彷徨わせる。 「俺の家族はきっと、お前のことを気に入ってくれる。でも······やっぱり他人ではあるから、お前も俺の母さん達にすごく遠慮してしまうと思うんだ。そう考えたら、お前が頼れるのは今、俺しかいないだろ?」 「······うん」 「だから、優生が望むなら、優生の家族に──······」 「嫌だ。」 最後まで伝える前に、ハッキリと拒否の言葉が聞こえた。 優生は震える拳を膝に乗せ、じっと俺を見てもう1度「嫌だ」と言う。 「もうあの家には帰らない。僕の事を何一つ考えてくれなかったあの家には······あの家族には、会いたくない。」 「優生······」 「匡君は、匡君自身がいなくなった時のことを考えてるのかもしれないけど、もしそうなったら、僕もそこまで。番である匡君が消えたら、僕は生きられない。」 そう言いながら、目に涙を貯めている。 瞬きをすると、涙が散って長い睫毛が濡れる。 「僕の家族の事は諦めて。そもそも僕には家族なんて居ないよ。僕を思ってくれる人なんて、あそこには誰1人いなかったんだから。」 「······でも、じゃあ······どうすればいいんだよ。俺は今でも、お前が兄貴に傷つけられていたことを思い出すと腹が立つんだ······っ!」 言葉にしてから気が付いた。 今の言い方じゃ、きっと優生が負い目を感じるはずだ。 兄に抱かれていた自分を責めてしまう。 「ぁ、優生、違う······俺が言いたいのは······」 「うん。わかってる。僕は大丈夫だよ。過去は消せないけど、僕は先の事しか見てないから。」 小さく微笑むその中に、少しの悲しみが含まれているのがわかる。 「だから、匡君も僕の過去の事は忘れてくれないかな······?難しいことは分かってる。でもそうしないと、匡君と僕の考えがいつまでも一致しない。」

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