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第448話
強い優生の言葉に、何も言えずに黙り込んだ。
考えが一致しない。きっと今そうなれば、この先すれ違う事が多くなると思う。
「······」
「あの、匡君······。」
「悪い。今日はもうこの話はやめよう。」
自分から話があるって言っておきながら、勝手に話を切った。それでも優生は怒らない。
「匡君が僕の事を考えてくれてるのはわかるよ。ありがとう。」
逃げるように顔を背ける。
俺達ならきっと分かり合えるはずなのに、今はどうしても納得出来ない。
昔から意地を張って拗れてしまう。分かっているのに、その性格が直らない。
「匡君」
「何」
顔を見ないで返事をした。
優生の顔が見たくないんじゃなくて、自分の顔を見せたくなかったから。
「困らせてごめんなさい。」
「······謝らなくていい。ちょっと外に出てくる。」
「ぁ······」
部屋を去り、寮の外に出て近くに置いてあるベンチに腰掛けた。
日陰になっているここは涼しい。
何も考えないでぼんやりする時間が、きっと俺には必要なんだと思う。最近はかんがえることばかりをしていたから。
「──······赤目」
ぼーっと景色を眺めていると、声を掛けられて、咄嗟に振り返る。
「ああ、高梨先輩か。何か用か」
「部屋からお前が見えたから来た。1人でこんな所に居るなんて珍しい。」
「······考えるのをやめようと思って。」
そう言って、前を向く。
何故か高梨先輩が隣に座って、「俺もある時から考えることをやめた。」と言い出した。
「何で」
「考えれば考える程、心が病んでいくのがわかった。」
「あんたにもそんなに嫌なことがあるのか。」
普段の先輩からは、そんな様子は見受けられない。
信じられなくて、失礼だと理解た上で問いかけると、ゆっくりと1度頷く。
「あるな。俺は偉成みたいに強くない。虚勢を張ってるだけだ。そうしている方が楽だから。」
高梨先輩は兄貴の幼馴染み。
俺も小さい頃に何度か会ったことはある。
けれどその程度で、何も話したことは無いし、高梨先輩の今までの人生がどんなものだったかも知らない。
「へえ、虚勢なんだ。」
「まあ、ほんの少しだけだがな。」
何か相談をした訳では無い。
けれど、考えることをやめようとした俺を肯定してくれた。それだけで少し気持ちが落ち着いた。
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