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第449話 悠介side
俺の腕の中で微睡む旭陽。
「体勢辛くない?」
「うん」
俺の胸に凭れ、そのまま動かないでいる。
この状態でもうどれくらい経ったんだろう。
「旭陽、ちょっと動くよ。」
「ん」
抱っこしたまま、少しだけ体を動かす。
「悠介、重い?大丈夫?」
不安そうに聞いてきた旭陽に微笑んだ。
「大丈夫だよ。それより少し外に行こうか。太陽浴びに行こう」
「暑いよ」
「ほんのちょっとだけ。」
少し強引に旭陽を外に連れ出す。
手を繋いで出ると、サッパリとした空気が気持ちいい。
「······気持ちいい」
旭陽もそう感じたのか、いつもより柔らかい表情をしている。
「そうだね。ずっと部屋に籠りっぱなしだったから。たまに気分転換するのもいいかもね。」
「······うん。」
旭陽の悪阻は少しマシになったみたい。
以前に比べるとお腹も僅かに膨らんでて、そこに新しい命が宿ってると思うと幸せを感じる。
旭陽がどこかを見ながら、お腹を優しく撫で始めた。
無意識なのだろうか、手はゆっくり動いて止まることはない。
「どうしたの?」
「え?」
俺の視線を辿って自分のお腹を見る旭陽。やはり無意識だったようで、撫でている手をぼんやりと眺めていた。
「ちょっとお腹が大きくなってきたね。」
「······俺、ちゃんと産めんのかな。」
旭陽の口から零れる。
そっと旭陽を抱きしめて、額にちゅっとキスをする。
「きっと大丈夫だよ。」
「うん」
暑くなってきた。
日陰に逃げて、石の上に腰掛けた俺の膝に旭陽を座らせる。
「体調はどう?」
「最近は悪阻も殆ど無いかな。悠介がおったから前よりは不安とちゃうし。······やから悠介、そろそろ学校に行っても大丈夫やよ。」
「······本当に?無理はしてない?」
旭陽は小さく頷いて、俺の肩に頬を付ける。
本当はずっと一緒に居たいと思ってくれているんだろうし、俺もそう思う。けれど旭陽は俺の学業を心配して我慢しているんだろうな。
「でもな、帰ってきたら甘やかして。俺も悠介のこと甘やかしてあげる。」
「それは嬉しいな。」
旭陽を抱き締める。そっと顔を上げた旭陽にキスした。
唇を舐めると薄く口を開けた旭陽。舌を入れて深く絡ませる。
「んっ、は······、もう無理······」
「可愛い」
旭陽の頬に触れる。少し熱くなっているそこを、体温の低い自分の手で撫でた。
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