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第458話 匡side
高梨先輩と話をしたあの日。
あれから先輩と会って話すことが多くなった。
「明日は雨だな。雨の匂いがする」
廊下で窓枠に肘を置き、外を見ながらそう言う。
「へえ。」
「······興味無いな?」
「あると思うか?」
兄貴に頼まれて放課後、校内を高梨先輩と2人で見回っていた。少し休憩ってことで、何も無いここで時間を潰す。
「あんたのそのハッキリしてるところ、いいと思う。」
「そうか。」
「これも興味ないのか?」
「全くな。」
適当な会話には食いつかない。
でも、気を使わなくていいから楽。
「もう行こう。」
「まだ行かない」
そろそろ休憩も終わりにしようと、先輩を振り返ると首をかしげて拒否をした。
「疲れた。こんな見回りは警備員にさせておけばいい。俺達がすることじゃないだろ。」
「······あんたもそんなこと言うんだな」
珍しく人間らしい先輩の姿に思わず笑ってしまう。
それでも何も言わないから、どうやら本当にまだここから動く気は無いようだ。
そんな先輩を背中を壁に預けてからぼんやりと見た。
「あんたは番作らねえの?」
「ああ。決めた相手がいる。」
「ん?ならその人と番になるんだろ?」
そう言うと、先輩の目が俺をじっと見る。
「番にはならない。決めた相手はいるが、そいつは俺を選ぶことは無い。」
「······どういうことだ?」
決めた相手なら、何をしてでも自分のものにすればいいのに。
「あ、もしかしてその人はもう他のアルファと?」
「いや、違う。」
「ならいいじゃねえか。自分のものにすれば」
すぐに苦笑を返された。
それからなかなか動こうとしなかったくせに「行くか」と言って、俺より先を歩いていく。
あまり踏み込まれたくない話題だったか。
「お前は番とはどうなった。」
「あー······別に、喧嘩したわけじゃないけど、なんか気まずくて。優生の為だと思ってしようとしたことは優生には迷惑だったみたいで。」
「お前は世話焼きだからな。偉成に似て」
廊下を歩きながら、そんな会話を続けた。
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