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第460話
「僕は······ただ、匡君と前みたいに普通に接したいだけで······」
「それなのに、わざわざ離れようとしたのか?逆効果だって気付かないのか?」
ついつい溜息を吐いてしまう。
「ぁ······あの······」
「離れて、それでどうするつもりだった。まさかそれで仲が戻るって思ったか?」
「ち、ちがうくて······」
「普通にしたいなら、もっと別の方法があるだろ。」
立ち上がり、苛立った気持ちを落ち着かせたくて部屋から出る。
「あれ、匡。どこか行くの?」
「千紘······」
廊下に出るとたまたま千紘と兄貴に会った。
どうやら今帰ってきたらしくて、まだ制服を着てバッグを持っている。
「苛立ってるな。小鹿と何かあったか?」
「······頼みがある。」
小さく息を吐いて、千紘を見る。
「もしかしたら優生が落ち込んでるかもしれない。俺のせいで傷ついたかもしれない。けど今俺が戻っても同じことの繰り返しだから、暫くそばに居てやってくれないか。」
「え······それはいい、けど······。何があったの?」
千紘の言葉を無視して兄貴の腕を掴み、廊下を歩く。
「え、匡っ!」
「頼んだ。兄貴は借りる」
兄貴は何を言うことも無く、俺にされるがままになっている。
「匡はまた何かしたのか」
「俺が悪いが前提か」
「小鹿が傷ついたかもって言ってたからな」
建物の中にある休憩所のような場所で、置いてある自販機で飲み物を買い椅子に座る。
「ずっと気まずいままだったのは知ってるし、どうにかしないといけないのはわかってたけど、俺だけが我慢して、また別のこと言われたから面倒になって······」
「お前は本当に自分の気持ちを伝えるのが下手くそなんだな。どうせ何も考えず思った事を言ったんだろ。」
図星すぎて何も言い返せない。
黙ったままでいると、兄貴が小さく笑う。
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