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第461話
「俺もすごく苦手なんだ。だから前は千紘を傷つけてたと思う。」
「でも、兄貴は千紘の事が匂いでわかるだろ。」
「わかるよ。けどな、前も言ったがそればっかりに頼れない。細かい感情はわからないんだ。」
顔を上げて、兄貴を見る。
「優生の家族の事、まだ腑に落ちてない。優生に謝るくらいしてもいいだろ。」
「でも小鹿が嫌がったんだろ?それは傷つくかもしれないからだと思う。自分を貶しめた相手をまた見たいとは思わない。それは理解してやるべきだ。」
俺の独り善がりなのはわかってる。
兄貴の言葉は納得のできるものだ。
「今回はお前がムキになりすぎている気がする。謝るなら今だと思う。」
「そうだな······」
「だがお前の気持ちもわからんでもない。きっとアルファのプライドが邪魔してるんだろうな。だからまあ、そのプライドは捨てろ。」
背中をトン、と軽く叩かれる。
さっきもきつい言葉を言ったし、それについても謝らないと。
「そろそろ腹が減ったしな。······よし、戻るか。」
「······謝れると思うか?」
「お前が素直に謝れるとは思わないが、小鹿は番だろ。お前が守るべき存在だ。そんな小鹿をまたお前が傷つけるなんてことはしてはいけない。だから、プライドを捨てろと言った。」
兄貴は真剣な表情でそう言う。
「できないなら今は謝るな。それが出来るようになってからにしろ。」
「······それは逃げと同じだろ。」
「そう思うなら素直に謝れ。俺に謝れるかどうかなんて聞くな。俺は千紘にしか興味はない。」
「弟に言う言葉かよ」
思わず笑ってしまった。
少しは俺にも興味を持てよって思って。
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