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第462話
兄貴に言われて部屋に戻ると、泣いている優生とそんな優生の背中を撫でる千紘がいた。
「千紘、悪い。ありがとう」
「あー······、じゃあ俺帰るね。優生君、何かあったら部屋においでね。」
千紘が部屋から出ていく。
優生とふたりきりになって、部屋は静かだ。
「優生」
名前を呼び、優生の隣に腰を下ろす。
「話、してもいいか。」
「······お、怒ってる······っ?」
「いや、怒ってない。さっきはきつい事言って悪かった。ちゃんと話がしたい。」
「ぅ、うん······」
優生は返事をしながら、俺を不安そうな顔で見る。
「さっきは、何も考えずに思ったままに発言してごめん。」
「ぁ······そ、それは、僕も······匡君がいつも、僕の事考えてくれてるのに、それを蔑ろにするような事ばかりして、ごめんなさい······。」
「謝らなくていい。今回のこの件については、優生の意思を尊重するべきだったから。」
ちゃんと、誤解なく伝われ。
その気持ちで言葉を紡ぐ。
「泣かせてごめん」
優生の頬に手を伸ばして、流れている涙を拭ってやる。
「ただ、俺の本音はさっき言ったことだ。俺にどうしてほしいのかは、何個も言われると正直煩わしくなる。」
「······さっきも言ったけど、普通に戻りたいの」
「ああ。」
俺に凭れてきた優生。
そっと腕を回して抱きしめる。
「お願い、匡君。僕の家族のことはもう忘れて。ただ、一緒に僕と······いつもの時間を過ごして。」
「······わかった」
頷いて身体を離す。
納得はしていない。けれど優生の言う通りにしないと、傷つくのは優生だから。
「ごめんね、匡君」
優生もそれをわかっていて、そう言って俺の肩に顔を埋めた。
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