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第463話 悠介side
夏休みになった。
俺は毎日旭陽と一緒にいて、旭陽も憂鬱になること無く、前までの姿は嘘だったかのように明るく過ごしている。
「悠介!こっち来て!」
「何?何かあった?」
軽い運動も合わせて、買い物に行く。
その帰り道で旭陽が立ててあった看板を興味あり気に見ていた。
「祭りやって!行かへん?」
「行きたい?」
「行きたい!」
打ち上げ花火もあるらしく、旭陽はそれが見たいらしい。
「花火やで!俺なぁ、打ち上げ花火見んのはほんま小さい時以来やねんな。ちっちゃい花火もあんましたことないけど。」
「じゃあ見に行こうか。あ、でも危ないから絶対に俺から離れないことと、しんどくなったらちゃんと言うってことは約束してね。」
「うん!」
笑顔で頷いた旭陽が愛しくてたまらない。
人目がなかったら今ここで抱きしめてキスしたいくらい。
「それから、小さい花火もする?」
「え、ほんま?」
「うん。旭陽のしたい事は全部しよう。夏の思い出ってなんか······特に色濃くてさ、一生忘れないでしょ。」
「そう?俺別に夏やからとかは思わんけど······。あ、でも悠介と出会ってからは全部覚えてるで。」
胸がキュンとして、さっきは我慢したけど、堪らず旭陽を抱きしめキスをした。
「んっ!な、何っ!」
「あまりにも可愛いから······。我慢できなくなっちゃった。」
「······人おる時はあかんって······。」
「いいじゃん。この子もお母さんとお父さんが仲良しな方が嬉しいと思うよ」
「それとこれとは違う!!」
旭陽が俺の肩を叩く。
その手を取って、そのまま繋ぐ。
「帰ったらもっとイチャイチャしようか」
「············」
「旭陽?」
俯いている旭陽の顔を覗き込む。
旭陽と目が合って、ゆっくり逸らされた。
「帰ってからやったら、ええ······けど······」
「······早く帰ろう」
今すぐ走って帰りたくなった。
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