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第470話
電車に揺られてしばらくすると、水族館の最寄り駅に着いた。
電車をおりて、悠介と手を繋いだまま水族館までの道を歩く。
「疲れてない?」
「大丈夫」
夏休みやからか、子連れの親が多い。
その中で、たまたま男同士の大人の間に小さな子供が歩いているのが見えた。
あれは親子やろうか。
「······」
「旭陽?どうしたの、何を見て──······」
「あれ、いいなぁ。」
悠介と俺との間に、子供を挟んで、それぞれが小さな手を繋ぐ。
「本当だね」
「俺も早くああなりたいな。悠介と二人でも楽しいけど、この子が産まれたらもっと楽しいやろね。」
悠介と繋いでる手に、きゅっと力が入る。
「じゃあ、その子が産まれたらまたここに来よう。他のいろんな場所にも連れて行ってあげないとね。」
「うん」
悠介の手にひかれて、水族館に入る。
お金を払ってチケットをもらい、大きな水槽に向かって歩いた。
「すご!大きい!」
「本当だね」
暗い水族館の中で、水槽の中がやけに輝いて見えた。
「悠介、あの魚美味しそうやな。」
「え······旭陽、今は食べ物としてみるのはやめようね。」
「あかんの?わかった。」
場所を移動して、一通り見て回ると、館内にあるカフェに入った。
「お腹すいたね」
「うん。俺これがいい」
イルカの形に型どったご飯がカレーの海を泳いでる。ついついそれに惹かれて、メニューを開けて直ぐに指を指した。
「他は?」
「あー······パフェも」
パフェ食べるのも初めてで、量が多かったらどうしようと思ったけど、そんな俺の不安を察したのか、悠介がにっこり微笑む。
「お腹いっぱいになったら、残りは俺が食べるから、食べたいやつ頼んでね。」
「······ありがとう」
そうして店員さんを呼び、悠介が注文をする。
待っている間、悠介とテーブルの上で手を繋いで、他愛もない会話を続けていた。
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