476 / 876
第476話 偉成side
切れた電話。
ツーツーと音を立てる。その音が虚しい。
千紘が居なくなった寮の部屋。
今は代わりに誉がいる。
「フラれたか?」
「······お前はなんでそんなに嬉しそうなんだ」
「お前が落ち込んでる姿は滅多に見れないからな」
スマートフォンをテーブルに置き、誉と話の続きをする。
「で、俺達が引退した後の生徒会だが······」
「おいおい、強がるなよ。松舞との事がショックなくせに。」
「······会うのがダメらしい。嫌だって言われた。悲しい」
平気なフリを繕ったのに、誉にはわかるらしい。すぐに強がりをやめて、本音を零す。
誉はテーブルに肘をついて手に顎を乗せ、俺を見る。
「進学が原因か」
「······千紘は子供を欲しがっていて、前に話をした時にあと少しだと言ったんだ。千紘が卒業したらってな。」
「進学したら、それが無くなるから松舞は怒ったのか。」
「怒ったというか······多分、あれはショックを受けてる。」
悲しそうな声だった。
きっと目の前にいたなら、予想が千紘から香る匂いで確信できるのに。
「俺がこのまま家を継ぐと思ってただろうから、これは俺が悪い。千紘にちゃんと話もしなかった。」
「さすがオメガだな。」
「そんな言い方はやめろ。誰だって自分の子供が欲しいだろう。それが運命の番との間だったら尚更な。」
俺も俺の血と千紘の血が流れる子供が欲しい。
欲を言えば今すぐにだってこの腕に抱きたい。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!