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第476話 偉成side

切れた電話。 ツーツーと音を立てる。その音が虚しい。 千紘が居なくなった寮の部屋。 今は代わりに誉がいる。 「フラれたか?」 「······お前はなんでそんなに嬉しそうなんだ」 「お前が落ち込んでる姿は滅多に見れないからな」 スマートフォンをテーブルに置き、誉と話の続きをする。 「で、俺達が引退した後の生徒会だが······」 「おいおい、強がるなよ。松舞との事がショックなくせに。」 「······会うのがダメらしい。嫌だって言われた。悲しい」 平気なフリを繕ったのに、誉にはわかるらしい。すぐに強がりをやめて、本音を零す。 誉はテーブルに肘をついて手に顎を乗せ、俺を見る。 「進学が原因か」 「······千紘は子供を欲しがっていて、前に話をした時にあと少しだと言ったんだ。千紘が卒業したらってな。」 「進学したら、それが無くなるから松舞は怒ったのか。」 「怒ったというか······多分、あれはショックを受けてる。」 悲しそうな声だった。 きっと目の前にいたなら、予想が千紘から香る匂いで確信できるのに。 「俺がこのまま家を継ぐと思ってただろうから、これは俺が悪い。千紘にちゃんと話もしなかった。」 「さすがオメガだな。」 「そんな言い方はやめろ。誰だって自分の子供が欲しいだろう。それが運命の番との間だったら尚更な。」 俺も俺の血と千紘の血が流れる子供が欲しい。 欲を言えば今すぐにだってこの腕に抱きたい。

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