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第478話

結局、生徒会には今の2年生から新しい人材を引っ張ってくることにした。 「じゃあ、新学期が始まったら、その2年に話をしに行けばいいんだな。」 副会長の候補は匡と千紘と同じクラスにいるもう1人のアルファ。 同じ空間で仕事をするなら、匡と千紘とは知り合いの方がやりやすいと思う。 「ああ。俺も行くか?」 「お前は先に松舞とのことを解決しろ」 「······そうだな」 千紘が会いたくないと言うなら、会いに行くのは新学期が始まってからにしよう。 「じゃあ俺はそろそろ家に帰る。」 席を立った誉。 見上げると、不思議そうな表情で俺を見た。 「お前は家に帰らないのか?」 「あと二、三日したら帰るよ。誉はいつも親がうるさいから帰りたくないと言っている割にちゃんと帰るよな。」 「ああ。また番の事で文句を言われるだろうけどな。一度も帰らずに電話で散々文句を言われるよりはましだろ。」 確かに。しつこく電話が鳴るよりはましか。 「お前は本当に、番を作らないのか。」 「······作らないんじゃない。作れないんだ。」 それだけ言うと誉は出て行った。 ふっと体から力を抜いて、背凭れにグッともたれ掛かる。 「千紘に話をする······」 本当に新学期が始まってから話をするべきか。 俺としては今すぐ会いに行って話したいと思うけど、千紘が聞いてくれるかどうかだな。 「ご飯、作らないとな。」 もう時間は夜の7時を過ぎていた。 キッチンに立ち、面倒臭さからカップラーメンを出してお湯を用意する。 「······はぁ」 お湯を入れて3分待つ。 その時間が長くて煩わしい。 誰かと居る時はご飯を作らないとと思うのに、自分だけのためとなるとやる気が出ない。 前まではそんなこと無かったのに。 「······明日電話しよう。」 箸とお茶を用意しながら、そう決意した。

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