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第481話 千紘side
憂鬱な気持ちで過ごした日々。
長かった夏休みが明け、今日は早くも登校日。
電車で学校に向かい、教室に入ると優生君と匡が居て「おはよう」と声をかけてきた。
「おはよう」
「······元気無いね?」
「ううん。あるよ。夏休みが長かったから学校が嫌だなぁって思っただけ。」
「確かに!長期休暇の後って嫌だよね。」
優生君は明るく話してくれるけど、隣で匡はじっと俺を見ていて、もしかすると偉成から何か話を聞いたのかもしれない。
「千紘は家に帰ってたのか?」
「うん。ずっとね。」
「······兄貴は?」
「知らない。もう暫く連絡も取ってないし」
そう言うと優生君は驚いた顔をして、匡は「やっぱりか」と言って苦笑を零した。
「会長さん、千紘君不足で死んじゃうんじゃない?」
「どうでもいいよ。それより、やっぱりって何?」
匡は嫌なことを思い出したのか、苦い顔のまま口を開く。
「俺も夏休みに1度だけ家に帰ったんだ。その時兄貴に会ったけど、もう生気が無いというか······とにかく目に見えてわかる程に窶れてた。」
「へえ?」
「番のいるアルファは、独占欲が強いんだ。番になった途端オメガが監禁されることもよくある。だから兄貴がああなるのもわかる。」
監禁か。
ずっと一緒に居て俺の事を考えてくれるなら、それの方がいいかもな。
「で、何でそうなったの?」
「······それは、」
「あ、聞かない方がいいなら今のは聞かなかったことにして!」
「ううん、大丈夫。」
夏休みにあったことを全て話した。
進学すると言われて、寂しくなったことも、生徒会の事で少し裏切られたような気持ちになったことも、全部包み隠さず。
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