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第484話

「高良先輩にそんなに愛されてる旭陽先輩は幸せだね。」 「そうだといいな。俺もすごく幸せだしね。」 いいな、いいなぁ。 旭陽先輩の気持ちを事を1番に考えて、優しさで包んでくれる高良先輩。 「千紘ちゃん、ちょっと散歩に行こうか」 「え······?」 手を掴まれ、立ち上がった高良先輩につられて立つ。 「会長、借りるよ。」 「······ああ」 俺達を見ることなく、偉成は返事して、俺は高良先輩と生徒会室を出た。 どこに向かっているのか、歩き続ける先輩。 「千紘ちゃんは会長と喧嘩した?」 「喧嘩というか······」 「うん、教えて?」 先輩に言われるがまま、あったことを説明した。 説明している間に、また寂しさに侵されて、ついつい先輩の手を強く握ってしまっていた。 「あ、ご、ごめんなさい······」 「ん?いいんだよ?······あのね、実は2人のこと会長から聞いてたんだ。俺達クラスは一緒だし、席が前後だから、今朝会長の調子がおかしくて聞いた。」 なるほど。 立ち止まって先輩を見上げる。 「俺は会長の行動が理解出来る。でも、もし俺が同じことをしたら旭陽が悲しむのも分かる。だから······会長にはもう少し千紘ちゃんを理解してもらう必要があるね。」 「······俺も偉成のこと、理解できてなかったと思う。だから寂しい気持ちになっちゃう」 わかってるから、それも悔しい。 「偉成と話さないといけないことはわかってる。そうしないと解決しないから。」 「うん。」 「話して、生徒会のこと考え直してくれるかな。ううん、考え直さなくていいけど、少しだけ俺の気持ちを聞いてくれたら、それでいい。」 「会長は聞いてくれるよ。絶対にね。だから今日は生徒会の仕事は特にないし、生徒会室に戻ったら会長と先に帰りな。」 頷いて、来た道を帰る。 教室から生徒会室に行く時よりも、まだ心は軽かった。

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