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第491話
千紘が眠る寝室から出て、リビングで自分の勉強を進める。
夕方頃になると部屋に千紘を心配した匡と小鹿がやって来た。
「千紘は?」
「寝てる。病院にも行ったから大丈夫だとは思うんだがな。」
「熱は下がったのか?」
「さっき測った時は微熱だった」
2人とも少しだけ千紘を見て、すぐに長居しては迷惑だからと言って、学校で配られた千紘の分のプリントを置いて帰って行った。
千紘のご飯を作らないと······とキッチンに移動しようとすると、小さな声で名前を呼ばれているのに気が付いて、寝室に足を向ける。
「千紘?どうした?」
「······偉成」
「寂しいのか。」
千紘の匂いから寂しいという感情が伝わってきて、ベッドの縁に座り、千紘のお腹辺りを優しくポンポンと叩く。
「大丈夫、一緒にいるよ。」
「······手、繋いで」
可愛いお願いを断るわけがなくて、まだ少し熱い千紘の手を取り、指を絡める。
「今日は風呂は入らずに体を拭くだけにしておこうな」
「うん」
「お腹は空いてないか?」
「空いてない。食欲無い」
くいっと手が引かれて、バランスを崩し千紘の方に倒れてしまう。
「偉成に抱きしめてほしい」
「······それくらいいくらでもするし、俺だってしたい。」
「して」
苦しくないようにいつもより弱い力で抱きしめる。
「やだ、もっと強くして」
「こうか?」
「うっ······強すぎる······」
「わ、悪い!」
意識すると力加減も難しい。
そのうち千紘はまた眠って、俺はキッチンに行き料理を作り、先に食べて風呂に入った後、千紘を起こしてご飯を食べさせた。
「じゃあ体拭くぞ」
「はーい」
そのあと幾分か元気になった千紘は、上半身だけ服を脱いで、大人しく俺に体を拭かれている。
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