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第496話 千紘side
***
10月になった。
今月は文化祭があるから忙しい。
それに加え、生徒会のメンバーが変わって、生徒会長になった匡は大忙しだ。
「だから違うつってんだろ!」
「そんな怒るなよ。初めての事なんだから知らなくたって仕方ないでしょ?」
そして副会長に偉成から直々に任命された、1年生の頃同じクラスだったアルファの井上君。
俺は結局高良先輩の跡を継いで書記をする事になり、会計にはアルファの寒沢 君が選ばれた。
最近は匡はイライラしていて、井上君が分からないことを質問すると、まるでそれくらいわかれ、というような態度を返している。
困ったなぁ、と思っていると生徒会室のドアが開き、偉成がやって来た。
「イライラしてるな」
「偉成!」
嬉しくて飛びつくと、優しく抱きしめてくれる。
「何しにきたんだよ。受験勉強で忙しいんだろ?」
匡がそう言うと、偉成はふっと笑った。
「千紘が昨日ボヤいてた。最近生徒会の雰囲気が悪いって。匡も千紘も実際に文化祭で動くのは初めてだし、上手く回せるか不安でイラついているんだろう?だから今回は俺も手伝う。」
俺がボヤいてたことなんて言わなくていいのに!
兄貴に余計なことを言うな!って匡に怒られたらどうしようと思ったけど、匡は意外にもコクリと頷き、偉成の言葉を素直に受け入れた。
「······助かる」
「よしよし。」
偉成から離れると、偉成は井上君の傍に行ってわからないと言っていた事を丁寧に教えていた。
俺は寒沢君とソファーに座ってその様子を眺める。
「松舞の番なんだよなぁ。金もあって頭も良くて顔もいいなんて······神は一体何物を与えたんだ?」
「寒沢君だって頭いいでしょ?それにお家だってお金持ちだし、顔も格好いいと思うけど?」
「······松舞、俺の番になるか?」
いきなり真顔でそんなこと聞かれて驚いた。
とりあえず断りの返事をしようと口を開くよりも先に、「かーんーざーわー?」と偉成の低い声が聞こえて寒沢君が「ひぃぃっ!?」と悲鳴をあげる。
「や、やだなぁ、冗談に決まってんじゃないですか!誰が赤目さんの番を横取りできるんです!?したくたって無理ですよー!な?なっ!そうだよな、松舞!」
「冗談!冗談に決まってるじゃん!それよりほら、井上君が困ってるよ!」
「······。井上、すまないな。千紘がふざけた輩にふざけた事を言われていてな」
「あ、あー······気にしないでください。一通り分かったんで俺は仕事します。」
偉成が井上君から離れて俺の隣に座り、体を引き寄せられる。
「千紘、お前は俺の番だ。わかってるな?」
「え?うん。」
「よし」
一体なんの確認だったんだ。
偉成は俺の頭を撫でて、またすぐに席を立ち匡の傍に行ってしまった。
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