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第497話
「それにしても急にくるからびっくりしたよ。」
「ああ。伝えていなかったもんな。」
生徒会が終わり、寮までの帰り道。
俺は偉成と匡と一緒に歩いていた。
「匡も、もう少し寛容になれ。」
「わかってはいるが、忙しくて······。兄貴はよく上手くやっていたな。」
「まあ、誉がいたしな。」
「ああそうだ······。あの人はなんでも出来るもんな。何も言わなくても事を進めておいてくれる」
確かに、前の生徒会で誰が1番動いていたかと聞かれると、偉成より高梨先輩だと思う。
仕事の面で高梨先輩は、偉成を誰よりも支えていた。
「誉はいつも俺を支えていてくれたしな。······そうだ。人手が足りないようなら、去年のお前達のように生徒会の補佐を2人程入れるのもありだと思うぞ。」
「補佐なぁ。」
「小鹿にでも手伝ってもらえば、お前のその苛立ちも少しは収まるんじゃないか?」
「優生には俺が帰った時におかえりって言って欲しいから無理」
思わずフッと笑うと、匡にギロっと睨まれた。
「何だ千紘」
「······すみません」
直ぐに笑うのをやめて、やっと着いた寮の建物に足を踏み入れる。
「帰ったら恋人がいるって言うのはお前が思ってる以上に嬉しいんだからな。」
「わかったよ。って言うかわかってるし。俺も最近は帰ったら偉成がいてくれるもん。」
「じゃあなんで笑うんだよ」
「匡がそんなこと言うからだよ」
見た目と言動のギャップが激しい。
偉成の手を取って、足早に部屋に向かう。
「そういえば千紘、今月は発情期があるだろ。生徒会の仕事は大丈夫か?」
「······忘れてた」
足を止めて、あとからゆっくり歩いてきていた匡を見る。
「匡」
「あ?何」
「俺今月······発情期」
「······あー、わかった。生徒会の仕事は無理せず出来るところまででいいから。最悪高梨先輩とか東條先輩に頼めるし」
申し訳なくなって視線を床に落とす。
俺の頭を撫でた偉成が「大丈夫」と言ってくれた。
「誉か東條に頼むなら、俺から言うよ。」
「ありがとう。じゃあ、とにかく千紘は我慢するなよ。お疲れ」
匡はそう言うとドアを開けて部屋に入って行った。
俺も偉成と一緒に部屋に入り、ふぅ、と息を吐いた。
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