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第504話

「おかえり千紘。今日も可愛いな。」 「······ただいま」 寒沢君達が部屋まで送ってくれたのは有難かった。けれど、こんな偉成の姿は見られたくなかった。 「今迎えに行こうかと思っていたんだ。今日は早く終わると思うって言っていたのに、もう6時だろ?何かあったんじゃないかって心配で······。ああ、そっちの2人。千紘を送ってくれたんだな。ありがとう」 ドキドキしながら後ろを振り返り、寒沢君と井上君に「また明日」と伝える。 2人は引きつったような笑顔で手を振って、そしてドアを閉めた。 「ぐぇっ!」 途端に力強く偉成に抱きしめられて、潰れたような声が出る。 「ご飯か?風呂か?それとも俺か?」 「······ご飯で」 「俺じゃないのか!!」 情緒不安定なのか、シクシクとわざとらしく泣き真似をする偉成の背中を撫でて、靴を脱いで部屋に上がる。 「ご飯食べて、お風呂に入って、明日一緒に文化祭楽しめるように早く寝ようね。」 「わかった」 やっぱり偉成も匡と同じで、触れ合える時間が短くなって寂しいのかな。 手を取り、指を絡めると俺をじっと見た偉成にキスをされる。 それがだんだんと深くなって、唇が離れる頃には頭の中はふわふわになっていた。 「ん、ご、ごはん······」 「わかってる」 ああ、やばい。 この雰囲気に流されてしまいそう。 「偉成!」 「はっ!何だ!」 大きい声を出せば偉成も少し正気に戻ったみたいだ。 「ご飯!」 「わ、わかった!すぐに用意する!」 バタバタとキッチンに消える偉成。 その後ろ姿を見てホッと一息つき、急いで服を着替えて用意の手伝いをした。

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