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第507話

文化祭は定刻通り始まって、去年もそうだったけど目まぐるしい忙しさだ。 外部の人間がアルファを狙ってくる。 男性もチラホラと見かけるけれど、やっぱり女性の方が多くて、接客を任されている匡なんかはさっきから女性に絡まれっぱなしだ。 まあ匡は顔もいいし頭もいい。それに加えて圧倒的なアルファのオーラを醸し出しているから仕方が無いと言えばそうだと思う。 けれど、かなり激しめのボディタッチをされていて、若干引いてしまう。 「千紘君」 「ん?なに──······優生君、その顔は匡に見せない方がいいよ。」 普段の優生君からは想像もできないほどの般若顔。 匡が女性に絡まれているのに嫉妬しているんだ。 「あー······匡は裏に入ってもらう?俺と交代しようか?」 「それはいい。······昨日僕に散々愛してるだとか好きだとか言ってたくせに。あんなの振り払えるじゃんか。どうしてそうしないの。僕はそれに腹が立つ。」 「優生君······」 普段の優生君からは聞けないような話の内容だ。 きっと優生君も生徒会で忙しい匡となかなか触れ合えなかったことに不満があるんだろう。 「匡!」 優生君からサッと離れて匡のそばに寄る。 匡は少し焦った様子で「何だ」と言いながら振り返った。 「優生君がお怒りだよ。俺がこっちやるから、匡は裏に入って。」 「え、優生が?」 「うん。何で振り払わないのって。」 匡は慌てて女性から離れ「違う!」と言って持っていたお盆を俺に渡し、裏に入っていった。 「あれ?赤目君は?松舞君と交代したの?」 「······井上君。」 声を掛けられて振り返ると、これまた両手に花状態の井上君がいた。 「うん。交代した」 「もしかして小鹿君が嫉妬したのかな?」 「嫉妬はそうだと思うけど、それより怒ってる感じかな。」 「番持ちは大変だねぇ」 そんな事を言う彼だけど、彼もどちらかといえば番は早く作りたいと思っているように思える。 「ちゃんと仕事してよね!」 「わかってるよ」 井上君の肩を軽く叩いて、「店員さーん」と呼ばれた席まで走った。

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