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第508話
「お待たせしました!」
「えっとー······」
メニューを見て注文するお客さん。
それをメモに取って裏に居たクラスメイトに渡す。
優生君と匡は少し話をしながら料理を作っていて、大きな喧嘩にならなくてよかったと安心する。
「ねえ、ねえ君!」
「え、はーい!」
別の席のお客さんに呼ばれて駆け寄る。
見た感じ、同い年くらいの男性。
「君ってオメガなの?」
「······え?」
「だってほら、噛み跡」
そう言われて咄嗟に手で項を隠した。
別にこの跡は恥ずかしいことじゃない。けれどそういう風に赤の他人から指摘されたのは初めてで驚いてしまった。
「可愛いもんね。オメガって感じ」
「······あの、ご注文は······?」
注文を促すと漸くメニューを見た。
少し不安に思いながら、また注文をとって裏に渡す。
そこで深呼吸をして、不安を消す。
「松舞君。······ねえ松舞君!」
「えっ!あ、な、何!」
「大丈夫?顔色悪いけど」
井上君が俺の顔を見て心配そうに眉尻を下げる。
「大丈夫······」
「そう?体調悪いなら座ってていいよ。」
「ううん。ありがとう」
料理が出来上がって運んでいく。
またあの席の人達の所に行かないといけなくて、意を決してテーブルまで運んだ。
「お待たせしました」
「あ、オメガちゃん。ありがとう」
「······いえ」
そんな呼ばれ方されたくないけど、言えない。
仮にもお金を払ってくれてるわけだし······。
そう思ってると急にお尻を揉まれて「ひゃっ!」と声が出た。
「可愛いねぇ。毎日番とえっちしてそんな声聞かせてるの?」
「なっ······!」
「俺も突っ込んでみたいな」
体にゾゾっと悪寒が走って、慌ててその手を叩き落として廊下に走って逃げた。
人目があるところで、あんなこと言われるなんて。
目に涙が溜まり、頬を伝う。
兎に角今は安心したくて、偉成の教室まで足を動かす。
教室の近くに行くと偉成が慌てた様子で飛び出してきた。
俺を見つけると目を見開いて、強く抱きしめられる。
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