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第510話

涙も止まり、落ち着きを取り戻した千紘は俺にもたれたまま何を話すことも無くじっとしている。 「千紘、どうする?文化祭一緒に回るか?それとももう寮に戻りたい?」 「······回る」 「ああ、じゃあそうしよう。もう少し休憩してから行こうか。」 本当なら泣いて赤くなってしまってる千紘の目を冷やしてやりたいけれど、今は千紘の気持ちを優先しないと。 「あのね」 「ああ」 それからポツポツとあった事を話してくれた。 話を聞いていると段々と腹が立ってきて、匂いでそれがわかったのか千紘が俺の胸を撫でる。 「だから、恥ずかしいというか······不安というか、とにかくマイナスな感情になってね、安心したくて偉成に会いたくなったの。」 「······そうか」 「でももう大丈夫。偉成と文化祭を楽しむって決めてたし。だから一緒に行こう?」 顔を上げた千紘がどこかぎこちなく笑う。 それを見たくなくて、キスをした。 舌を絡ませ、ジュッと舌先を吸うと、千紘の腰がビクッと震える。 唇が離れ、額をこつんっと合わせる。 至近距離でじっと見つめあった。 「無理してないか」 「ん······してない。大丈夫」 今度は千紘から触れるだけのキスをしてきて、そっと体を離す。 「じゃあ回ろうか。嫌になったらいつでも寮に戻ろう。わかった?」 「わかった」 ブレザーを着て手を繋ぎ、教室から出る。 「お腹すいたから何か食べたい」 「ああ。食べよう。何にする?」 校内を見て回って、そうしている内に千紘の顔には自然な笑顔が浮かんでいく。 「偉成!あっち!」 千紘に手を引かれて、これ以上ないほどに満たされていった。

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