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第511話
ベンチに座り綿菓子を食べる千紘。
隙を見てキスをすると甘い味がした。
「もう、そんな急にされたらびっくりするよ。」
「キスしたいって思うのはいつも突然だからな」
「それでも俺が食べてる時は我慢してよ」
綿菓子を摘んで取り、塊を俺の口の中に入れる。
「甘い」
「うん。砂糖の塊だからね」
わかってはいるけど、そんな事を改めて言われるとこれ以上千紘に食べさせない方がいいんじゃないかと思えてくる。
「······美味しいか」
「うん!」
でも、そんなにニコニコしながら食べているんだ。もう終わりなんて言って綿菓子を取るのは可哀想だ。
「フランクフルトも食べたい」
「ああ、あそこに見えるな。買ってこようか?」
「······ううん、一緒に行く。」
さっきのこともあってか、1人にされるのは不安らしい。
俺が離れないようにと、服の裾をキュッと掴んでくる。それが少し悲しいけれど、嬉しい。
「食べた」
「じゃあ行こう」
「あ、待って、手洗ってくる」
すぐそばの水道で手を洗っている千紘をじっと見る。余計な奴らが千紘に近づいたならすぐにでも助けられるように。
ハンカチが見つからないのか、濡れた手でポケットを叩く千紘に思わず笑ってしまう。
「千紘、そんなに叩いたらもうハンカチは必要ないだろ。」
「······最悪。びしょびしょだ」
持っていたハンカチで千紘の服を軽く拭いてやると幾分かマシになった。
「よし、じゃあフランクフルトだな。」
「うん!」
千紘と手を繋ぎ、フランクフルトの店に行くとそこには東條が居た。
俺達を視界に入れた途端に「げっ」と声を漏らす。
「東條先輩!?げって何!」
「いや······げ、元気だなぁって」
「うそ!絶対うそ!」
千紘が東條に詰め寄ると、東條が慌てたように千紘の口にフランクフルトを突っ込んだ。
「あちっ!」
「あ、悪い」
「······美味しいから許します」
そのまま食べ始めた千紘を見て、俺も1本もらい金を払った。
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