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第515話
***
目を開けると霧がかかったみたいにぼんやりしていた。
隣を見ると偉成がいて、穏やかな表情で眠っている。
今回の発情期も無事に終わった。
体力の消耗が激しくて、体があまりにも怠いけれど仕方がない。
ぶるっと寒気がして偉成に擦り寄って熱を分けてもらう。
「ん······」
身じろいだ偉成に少し緊張したけど、構わず抱きついた。
「······ちひろ」
「寒いから暖めて」
「ん」
偉成の手が背中に回る。
胸に頬をつけて心音を聞く。
トクトクと一定の音が聞こえて、それが眠気を誘う。
「好き」
そう言って偉成の胸にキスをすると、偉成の肩が僅かに震えてるのに気付いた。
「······笑うな」
「あまりに可愛くてな」
抱きしめられる力が強くなって、顔を上げるとキスされる。
「偉成ってキスが好きだよね」
「······千紘もだと思うが」
「······偉成のキスって甘くてさ」
そう言うとまたすぐに唇を塞がれる。
「俺もそうだ。千紘はどこもかしこも甘い。匂いだって俺をおかしくさせる。」
「······よく恥ずかしげもなくそんなこと言えたね」
「言えるよ。千紘が可愛すぎて仕方が無いんだ。······あ、そういえば忘れていた。」
突然偉成が起き上がり、俺の肩を掴んだ。
びっくりして目を見開いていると、偉成がにっこり笑う。
「パーティーがあるんだ。招待された。行こう」
「······はぁ?」
「誉や東條もくる。高良は楠本さんの体調のこともあるから出席できるかわからないが」
「パーティーって······もしかしてお金持ちが集まるやつ?」
偉成は首を傾げてるけど、何が疑問なんだ。
「お金持ちというより、財閥の御曹司とか······まあそんな感じかな。」
「それをお金持ちっていうんだよ」
「そうか。じゃあそうだ。」
俺の肩から手を離した偉成が「風呂入ろう」と言って俺を抱っこした。
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