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第516話

偉成のパーティー発言から数日経った土曜日。 休日だからゆっくり眠っていると、昼頃になって偉成に叩き起された。 「なに」 薄目を開いて聞くと、偉成はにっこり笑う。 「出掛けるぞ」 「······今日は休みだよ。まだ寝ないと」 「ダメだ。出掛ける。寝るなら移動中に。」 「······移動中?」 *** 黒塗りの明らかに高級に見える車の後部席に座る。 初めて見る人が運転をしてる。ビシッとしたスーツを着た人。 「······偉成、何が起きてるの。」 「ん?パーティーがあるって言っただろ?」 「言ってたよ。でも日にちまでは聞いてない。」 「そうか。今日だ。」 頭を抱えたくなる。 パーティーなのにこんなどうでもいいような服を着てきてしまっている。 「服······もっとましなのを着ておけばよかった」 「安心しろ。今から行くから」 「どこに?」 「服を買いに」 そう言っているうちに車が止まった。 運転手さんが車を降りて、わざわざドアを開けてくれる。 「自分で開けなよ!」 「こういうものなんだよ」 先に車を降りた偉成が手を差し出してくるから、その手に手を重ねて引かれるまま車を降りる。 そして顔を上げると、目の前には俺でも知ってる高級ブランドの洋服店があった。 「ここで買うの?」 「ああ」 「······ここで?」 「そうだ。その後はヘアセットだな。」 「ヘア、セット······?」 もうついていけない。 とりあえず偉成に手を引かれるまま歩き、上品な空間に足を踏み入れた。

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