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第524話

お湯が溜まると、2人でお風呂に入ることになった。 スイートルームだからか、お風呂場も広いし浴槽も大きい。 先に髪と体を洗って浴槽に浸かり、偉成も同じようにして俺の後ろに座り、お腹に手を回され引き寄せられる。 「ん、広いのに」 「くっついていたい」 背中にトン、と偉成の頭が触れる。 頭を撫でてあげると顔を上げて、肩に顎が乗せられた。 「千紘は酒が弱いんだな」 「そうみたいだね。初めて飲んだ」 「可哀想に······しんどかっただろう。」 「大丈夫だよ」 お腹を撫でてた手が上にあがり、胸に触れる。 軽く身じろぐと偉成がくくっと笑って、乳首をキュッと抓った。 「んんっ!」 「本当に?大丈夫?」 「あっ、ぅ······大丈夫じゃない!大丈夫じゃないから離して!」 手を離してもらって、自分の体を抱きしめる。 「上がる」 「もう?」 「だって、意地悪するじゃん。やだ。まだ頭痛いのに」 偉成を睨みつけると、苦笑を返された。 「悪かった」 「······何もしないで」 浴槽の縁に背中を預けて短く息を吐く。 お風呂から上がったらまた水を飲もう。それからすぐに眠るんだ。 初めてのパーティーは緊張したし、最後の最後にやらかしてしまったなぁ。 思い返していると、偉成と一緒に話をしていた人の事が気になった。 「そういえばパーティーで長い間話してる人いたよね?」 「見てたのか」 「うん。やっぱりなんか、心細くて実はこっそり目で追ってた。」 ちょっと恥ずかしくて小さな声で呟くように言ったけど偉成には伝わったらしい。 「多分宮間さんのことを言ってるな。あの人は16歳らしい。関西で有名な企業の御曹司だ。」 「御曹司······さすが。やっぱりそういう人達がアルファなのかな。遺伝?」 「······あの人はアルファじゃない。」 「え、じゃあベータ?」 偉成はなんとも言えない表情で首を左右に振る。 ということは残る性別はオメガだけ。 「オメガなんだ」 「ああ。シャツで隠れてはいたが首輪が見えた。それに本人もそうだと言っていた。」 「そっか」 オメガでも活躍してる人だっている。 その宮間さんって人がどんな人物であれ、オメガであることはおかしいことじゃない。 お風呂から上がり、髪を乾かして水を飲んだ。 それからすぐにキングサイズのベッドに寝転び、隣に偉成が座る。 「今日は疲れたなぁ。パーティーは初めてだったし、俺は何もしてないけど気疲れしちゃった。」 「そうだな。俺も少し疲れた」 寝転んだ偉成は俺を包み込むように優しく抱きしめる。 「寝よう。明日は寮に帰ってゆっくり過ごそう。」 優しい声が鼓膜を揺らす。 それだけで自然と眠たくなって、瞼を閉じる。 「うん。おやすみ」 「おやすみ」 次の日は穏やかな朝を迎えた。

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