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第525話
パーティーから1ヶ月程経った今日。
朝学校に登校して普段と同じように過ごし、生徒会を終わらせて寮に帰ると見たことの無い靴があった。
誰かが部屋に来ているのか。
そう思って「ただいま」と声を上げながら部屋に入り、リビングに続くドアを開ける。
「ち、千紘!」
「······何してるの」
そこには信じられない光景があって、バッグをぼとっと落した。
前にパーティーで見た偉成と話をしていた宮間さんが、偉成を押し倒してその腰あたりに馬乗りになっている。
「あ、見られちゃった」
「千紘、違うんだ誤解しないでくれ。おい、早く退け!」
「えー、何も違わないじゃないですか。」
偉成がなんとか宮間さんの下から抜け出して、俺の前に慌ててやって来る。
「違う、千紘、本当に信じてくれ」
「······うん。」
「っ、宮間、早く出て行け!」
偉成の怒った匂いがする。
宮間さんは「そんな言い方酷い」とかなんとか言いながら部屋から出て行った。
「偉成」
「あ、ああ。本当に誤解なんだ立ち上がったら足が絡まってしまって、それで······」
「匂いついてる。お風呂入ってきて」
「わ、かった······」
偉成と番になってから······というよりも、出会ってから1度もこんな光景を見たことがなかった。
偉成が他のオメガに······。
わざわざ寮の部屋で2人きりで会っていたのも気になるし、もしかすると宮間さんは偉成を俺から奪おうとしてるんじゃないかと、余計な心配までしてしまう。
偉成は足が絡んだって言っていたし、不安になることは無いのに。
着替えることもせずに、ソファーに座り考えなくていい事まで考える。
偉成が取られたらどうしよう。
ていうかそもそも、何であの人がここにいるんだ。
そういえば白樺の制服を着ていた。
どれほど時間が経ったのか、お風呂から出てきた偉成が制服のままソファーに座っている俺の隣に腰を下ろした。
「千紘」
「······何であの人がここにいるの?関西の人なんでしょ?今まで白樺では見た事なかったし、転校してきたってことだよね。」
「そう言っていた」
「そう。それはあちらの事情があるから仕方ないとして、生徒会に番のいないオメガが、アルファの寮に来るのはルール違反でしょ。どうしているの?何で許したの?」
じっと偉成を見ると、ぐっと押し黙った。
言えない理由があるのか、言いたくないのかわからないけど、今話す気はないらしい。
「······元生徒会長のくせに」
「すまない」
「二度とこの部屋に上げないで。」
立ち上がり、服を着替えに寝室に入った。
ドアに背中を預けてズルズルと座り込む。
これから宮間さんが偉成に近付こうとして来るかもしれないことを考えると、気が重たくなった。
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