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第526話

*** 俺の心配していたことは、現実になった。 朝、登校しようと偉成と手を繋いで寮を出ると、そこには宮間さんが居て、偉成の腕に自らの腕を絡ませる。 「おはようございます、偉成君!」 「あ、ああ······おはよう······」 それを振り解こうとしない偉成に腹が立って、手を離した。 「あっ、千紘!」 「ふんっ」 2人を放って先に歩いていると高梨先輩の後ろ姿が見えた。 「高梨先輩!」 「あ?······松舞か。お前何をそんなに怒ってるんだ?」 「偉成が······」 「また喧嘩か。よく懲りないな。」 隣に並んで一緒に登校する。 その間に宮間さんのことを愚痴ると、大きな手に頭をわしゃわしゃと撫で回される。 「心配しなくても、偉成の1番はお前だ。そんなに不安なら偉成を監禁でもしてみればどうだ。あいつなら喜ぶぞ」 「······監禁したところで宮間さんは諦めないよ」 「そうか?監禁されて喜んでる偉成を見て離れていきそうだけどな。」 「本当?」 「いや、知らない」 高梨先輩は俺をじっと見たかと思うと、後ろを振り返る。 「偉成には家の事がある。宮間を蔑ろに出来ないんだろうな。」 つられるように後ろを見れば、偉成と宮間さんがいて、高梨先輩の手を取り引っ張るようにして足を進める。 「それならそれで、俺に事情を説明すればいいのに!」 「説明したところで納得いかないだろ。」 ド正論を返されて高梨先輩をキッと睨む。 「いくかもしれない!」 「いや、お前は子供だからな。冷静じゃいられないだろうし、喧嘩してまた誰かに泣きつくんだろ。」 「高梨先輩はどっちの味方なの!?」 「俺はいつだって中立」 口角を少しだけ上げてる先輩を見てムカッとする。 これなら高良先輩に相談した方が······いやいや、高良先輩は旭陽先輩の事で忙しいからダメだ。 あともう少しで学校に着く。 そんな時「おはよー!」と高良先輩の明るい声が聞こえてきて、思わず笑みが漏れた。

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