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第527話

「高良先輩!」 「あれぇ、珍しい組み合わせ。それにどうしたの千紘ちゃん。そんなに笑顔で俺を迎え入れてくれるなんて!」 「高良先輩ぃっ」 「え、本当にどうしたの?」 高梨先輩は呆れたように息を吐く。 そんな態度取られたって構わない。今の俺は、俺を1番愛してくれる人を奪われるかもしれない不安に襲われているんだ。 「旭陽先輩は元気ですか」 「うん。元気元気。今朝は起きたくないって枕に抱きついてたよ。」 「そうですか」 何て返事をすればいいのか分からなくて、困っちゃう。 多分旭陽先輩は自分のそんな姿を俺に知られたくないと思う。 高梨先輩は先に校舎に入っていってしまった。 「それで?会長と一緒にいないどころか、高梨と登校してた理由は?」 「······あれです。」 高良先輩の後ろを指さす。 そこにはまだ腕を組んでる2人の姿が。 「あー······あれは宮間、だよね?何で白樺に?ていうか会長は朝から大胆だねぇ。公開不倫?」 「まだ結婚してないので浮気ですね」 「番になったら結婚したも同然でしょ。」 そんな会話をしていると宮間さんと目が合い、高良先輩に気付いた彼が偉成を連れて走って駆け寄ってくる。 「高良さん!お久しぶりです。この前のパーティーにはいらっしゃらなかったんですね。」 「うん、ちょっと用があってね。」 「その用って何ですか?」 宮間さんはそう聞きながら、あろうことか高良先輩の腕にまで腕を巻きつけようとしている。 それを察した高良先輩はすぐに距離をあけて、俺の肩に手を回した。 ──え、俺の肩に? 「先輩!?」 「今日は千紘ちゃんと一緒に帰ろっと。旭陽も会いたいって言ってたしちょうどいいよね。ねぇ、千紘ちゃん。」 「え?えーっと······」 困惑してると偉成が強い力で俺の腕を掴んだ。びっくりして肩が上がる。 「千紘、本気か」 「え······」 「安心しなよ。俺は千紘ちゃんを取ったりしない。なんせ俺には愛しい愛しい旭陽がいるから。どちらかというと危ない状況なのは会長の方じゃないの?そんなすごい剣幕で本気かなんて聞かれても困るよね、千紘ちゃん。」 高良先輩の言葉に頷くと、偉成の手が離れる。 「······楠本さんに会いに行くだけだな?」 「うん」 その予定は全くなかったけど、自然と返事をしてしまって、結局今日は高良先輩と旭陽先輩の家に帰ることになった。

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